FAITAL FRAME〜zero〜
□第四夜 キリエ

振り返ると、縁を歩く人影が見えた。


紺色の着物を着た若い男性のようだが、ここからでは顔はよくわからない。


しかし、池で見た男性とは違うようだ。


男性は手に持った蝋燭で辺りの様子を窺いながら、柵の向こうの部屋へと入って行った。


「……」


少し迷ったが、僕は男性を追って和人形の間へと入った。


部屋に入ると、奥に男性の姿があった。


『風…?仕掛け扉になっているのか……』


男性は壁を調べているようだったが、僕が一歩奥へ進むと、そのまますーっと消えてしまった。


男性が消えた場所には古い書置きが残されている。


"古い書置き"

清純、もしこれを読んでいるのならば、今すぐこの屋敷を出ろ。

出られぬのなら、今しばらくどこかに身を隠せ。

一体何があったのかはわからんが、氷室の当主殿は完全に正気を失っておるようだ。

もともと腕の立つ人だとは聞いていたが、この屋敷の惨状はすべて当主殿の手によるものなのか。

説得を試みたが、当主殿にこちらの声は届いておらぬようだ。

どうにか仏間に閉じ込めることはできたが、長くは持つまい。

屋敷内で見つけた見取り図によれば、北西にある鬼の口と呼ばれる部屋から地下に入れるようだ。

氷室の鎮魂祭は地下で行われると聞いたことがあるが、もしかしたら外に繋がっているかもしれん。

俺はこれから地下を調べに向かう。

出口が見つかったなら、迎えに行くから、どうかそれまで無事でいてくれ。


柏木秋人



「地下……?」


そういえば、氷室邸のことを教えてくれた友人が、この屋敷には古い地下道があると言っていた。


そこから屋敷の外へ出られるのだろうか。


先生のことも気になるが、出口を見つけないことにはどうにもならない。


「…とにかく地下へ行こう」


僕は書置きを手帳に挟んで部屋を出た。

1/6

no 次へ
[しおりを挟む][戻る]
「#甘甘」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -