FAITAL FRAME〜zero〜
□第三夜 清純

玄関から外に出て、長い橋を渡って行くと、どこか懐かしい村の中に出た。


けれど、人の気配はどこにもなかった。


無人の村の中を進んで行くと、あの少年たちが坂道を上って行くのが見えた。


後を追うように僕も坂道を上って行くと、見覚えのある丘の上に出た。


丘の中心には大きくて立派な桜の木があり、その下に一人の女性が立っていた。


桜模様の着物を着た、髪の長い美しい女性。


まるで誰かを待っているかのように、ただじっと桜の木の下に佇んでいた。


僕はしばらくの間その場に立ち尽くしていたけど、女性の待ち人は現れなかった。


辺りが薄暗くなって、月明かりだけになっても、女性はその場を離れようとはしなかった。


来るはずのない待ち人を、ただずっと待ち続けていた。


……わかっているはずなのに。


どんなに願っても、どんなに待ち続けても、もう待ち人が来ないことを、彼女は知っているはずなのに。


それでも、彼女は………



「!」


はっとなって辺りを見回すと、そこは中庭だった。


両足に縄の跡が浮かび上がっているのを見て、我に返った。


「そうだ、僕は確かあの白い着物の女性に襲われて……。さっきのは何だったんだ?夢?」


見慣れない屋敷と、桜の木がある丘。


双子の少年と、桜模様の着物の女性。


あれは一体何だったのだろうか。


「…いや、今はとにかく先生を探さなくては……」


そう自分に言い聞かせて顔を上げると、着物の男性が池の方へ消えていくのが見えた。

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