FAITAL FRAME〜zero〜
□第三夜 清純

どこかの村の中、大きな桜の木がある丘の上。


そこに双子の少年がいて。


彼らのそばには優しく微笑む女性が佇んでいた。


まるであたかかい木漏れ日のように、彼女がいるだけで心が穏やかになっていく。


…ああ、私はきっと彼女のことが………



「ここは……?」


ふと気づくと、僕は見慣れない部屋の中に倒れていた。


起き上がって辺りを見回すけど、何も思い出せない。


部屋の中には古びた机と、きれいに畳まれた布団。


それから小さな窓があった。


窓から外を見ると、中庭に二人の少年がいた。


白い着物を着た十代半ばの少年だ。


どこかで見たような気もするけど、思い出せない。


…とにかくここが何処なのか聞かなくては。


僕は立ち上がって部屋を後にした。



廊下を歩きながら僕はずっと考え込んでいた。


どうして自分はこんな所にいるのか。


一体いつここへやって来たのか。


けれど、考えれば考える程わからなくなる。


自分の名前さえ思い出せなかった。


「一体どうしてしまったんだろう……」


小さなため息をついて角を曲がると、さっき窓から見た中庭に辿り着いた。


けれどそこにはもう、先程の少年たちの姿はなかった。


代わりに、紅い着物を着た幼い少女がいた。


少女はしゃがみ込んで花を摘んでいる。


「…あの……」


「!」


僕が声をかけると、少女はびくりと肩を震わせて廊下の奥へ走り去って行った。


廊下には少女が摘んでいた花が散らばっている。


その花を一つ拾い上げると、ふっと頭の中にある場所が思い浮かんだ。


「…丘の上……そうだ。僕は確か……」

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