どこかの村の中、大きな桜の木がある丘の上。 そこに双子の少年がいて。 彼らのそばには優しく微笑む女性が佇んでいた。 まるであたかかい木漏れ日のように、彼女がいるだけで心が穏やかになっていく。 …ああ、私はきっと彼女のことが……… 「ここは……?」 ふと気づくと、僕は見慣れない部屋の中に倒れていた。 起き上がって辺りを見回すけど、何も思い出せない。 部屋の中には古びた机と、きれいに畳まれた布団。 それから小さな窓があった。 窓から外を見ると、中庭に二人の少年がいた。 白い着物を着た十代半ばの少年だ。 どこかで見たような気もするけど、思い出せない。 …とにかくここが何処なのか聞かなくては。 僕は立ち上がって部屋を後にした。 廊下を歩きながら僕はずっと考え込んでいた。 どうして自分はこんな所にいるのか。 一体いつここへやって来たのか。 けれど、考えれば考える程わからなくなる。 自分の名前さえ思い出せなかった。 「一体どうしてしまったんだろう……」 小さなため息をついて角を曲がると、さっき窓から見た中庭に辿り着いた。 けれどそこにはもう、先程の少年たちの姿はなかった。 代わりに、紅い着物を着た幼い少女がいた。 少女はしゃがみ込んで花を摘んでいる。 「…あの……」 「!」 僕が声をかけると、少女はびくりと肩を震わせて廊下の奥へ走り去って行った。 廊下には少女が摘んでいた花が散らばっている。 その花を一つ拾い上げると、ふっと頭の中にある場所が思い浮かんだ。 「…丘の上……そうだ。僕は確か……」 no 次へ [しおりを挟む][戻る] |