Wheel of Fortune〜zero〜
□最終夜 解放

地下へ下り回転扉を通ると、そこはまるで奈落の上の橋のような場所でした。


深い穴の底はただ闇があるばかりで、どこまで続いているのか定かではありません。


「…迷ってる時間はないし、行くしか…ない……」


私は覚悟を決めて、一歩を踏み出しました。


奥へ近づく程に、体が重くなる。


それに、頭の中に色んな声や音が入り込んでくる。


悲鳴、怒声、狂気染みた笑い声。


頭が痛くなりそう…。


でも、退く訳にはいかない。


奈落橋を抜け地下道を進むと、縄殿と思われる部屋に出ました。


中央に大きな台座があり、その周りに五本の柱が立っています。


柱には太い注連縄が巻きついていて、そのどれもが赤黒く染まっていました。


ここで縄の巫女は五肢を引き裂かれる…


「…先を…急がなきゃ……」


嫌な想像を打ち消すように、私は足早に縄殿を通り抜けました。


奥へ、奥へと、進み…


やがて私は、巨大な門へと辿り着きました。


おそらくこれが、黄泉の門なのでしょう。


けれど、門に目が止まったのはほんの一瞬でした。


なぜならそこに、兄さんと高峰さんの姿があったからです。


しかも、二人の五肢には縄が巻きついていました。


苦しむ兄さんの姿を見た瞬間、私は半ば反射的に駆け出していました。


「兄さん!!!」


けれど、兄さんに近づくことはできませんでした。


見えない結界のような強い力に阻まれ、どうしても兄さん達に近づけない。


このままじゃ二人共…っ


「!」


私はとっさに持っていた射影機を構えました。


ファインダー越しに辺りを見回すと、門の前に白い人影が立っていました。


五肢に縄が巻き付いた白い着物の女性……縄の巫女、霧絵。


私は意識を集中させ、霧絵さんをファインダーにおさめた状態でシャッターを切りました。


次の瞬間、霧絵さんの姿がふっと消え、後ろで兄さんが倒れる音が聞こえました。

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