…不思議な夢を見ました。 どこかのお屋敷の庭で、桜模様の着物を着た女性が泣いていて… そっと女性に手を伸ばすと、一瞬美しい鈴の音が聞こえたような気がして、気がつくと大きな台座の上に両手と両足を固定されているのです。 台座の周りにはまだ幼さの残る四人の巫女姿の少女がいて、みんな手に杭と木槌を持って、私を見つめている…。 でもふと気がつくと、長い螺旋階段のある洞窟の吊るされた牢の中にいて…。 誰かが、私を呼んでいる。 私はその人のことを知っているはずなのに、なぜか思い出せなくて。 牢へと駆け寄るその人に手を伸ばしても、触れることができないまま、暗く深い闇の底へと堕ちていく…。 …どうしてそんな夢を見るのか。 なぜ同じ夢ばかり見続けるのか。 私にはわかりませんでした。 でも、あの夢を見てから、ずっと嫌な予感を感じていました。 そしてあの日、兄さんから行方不明になった高峰さんの足取りが掴めたと聞いて、それは確信へと変わりました。 きっと何かが起こる。 それが何なのかはわからないけど… 兄さんがどこか遠くへ行ってしまうような、そんな気がしました。 そして…その日を最後に、兄さんからの連絡は途絶えました。 残されたメモと兄さんの言葉を手掛かりに、私は「氷室邸」へと辿り着きました。 古くてとても大きなお屋敷です。 まだ夕方だというのに、辺りは真っ暗で…どんよりとした雲が空を覆っていました。 「……兄さん」 普段なら、絶対に一人でこんな所には入らないでしょう。 でもここに、兄さんがいるのなら……。 私は勇気を振り絞り、氷室邸へと入って行きました。 no 次へ [しおりを挟む][戻る] |