Wheel of Fortune〜zero〜
□第一夜 夢

…不思議な夢を見ました。


どこかのお屋敷の庭で、桜模様の着物を着た女性が泣いていて…


そっと女性に手を伸ばすと、一瞬美しい鈴の音が聞こえたような気がして、気がつくと大きな台座の上に両手と両足を固定されているのです。


台座の周りにはまだ幼さの残る四人の巫女姿の少女がいて、みんな手に杭と木槌を持って、私を見つめている…。


でもふと気がつくと、長い螺旋階段のある洞窟の吊るされた牢の中にいて…。


誰かが、私を呼んでいる。


私はその人のことを知っているはずなのに、なぜか思い出せなくて。


牢へと駆け寄るその人に手を伸ばしても、触れることができないまま、暗く深い闇の底へと堕ちていく…。


…どうしてそんな夢を見るのか。


なぜ同じ夢ばかり見続けるのか。


私にはわかりませんでした。


でも、あの夢を見てから、ずっと嫌な予感を感じていました。


そしてあの日、兄さんから行方不明になった高峰さんの足取りが掴めたと聞いて、それは確信へと変わりました。


きっと何かが起こる。


それが何なのかはわからないけど…


兄さんがどこか遠くへ行ってしまうような、そんな気がしました。


そして…その日を最後に、兄さんからの連絡は途絶えました。



残されたメモと兄さんの言葉を手掛かりに、私は「氷室邸」へと辿り着きました。


古くてとても大きなお屋敷です。


まだ夕方だというのに、辺りは真っ暗で…どんよりとした雲が空を覆っていました。


「……兄さん」


普段なら、絶対に一人でこんな所には入らないでしょう。


でもここに、兄さんがいるのなら……。


私は勇気を振り絞り、氷室邸へと入って行きました。

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