縄殿から出ると、そこには赤い鳥居の道が続いていた。 長い間使われていないはずの地下道に、ぽつぽつと蝋燭の火が灯っている。 辺りはしんと静まり返り、僕と先生だけの足音が響いているはずなのに、たくさんの悲鳴が聞こえてくるような気がした。 ここには僕達しかいないのに、時折誰かが横を通り過ぎる。 その度に凍てつくような霊気が体を包み込む。 息が、苦しい。 「…あれは…!」 ふと先生の声が聞こえて、僕は顔を上げた。 すると、暗闇の中に巨大な門が見えた。 あれが…黄泉の門、なのか? 近づくにつれて闇が深まっていくような気がした。 それでも、僕達には前へ進むしか選択肢がない。 やがて門の前まで辿り着いたところで、先生が風呂敷包みを開いた。 バラバラになった鏡の欠片を、門の前にある岩の窪みに納めていく。 しかし、あと一つ欠片が足りない。 辺りを見回すが、それらしきものは見当たらない。 やはり屋敷のどこかにあったのだろうか…。 「ここには…欠片はないようですね」 「そのようだ。…しかし、もう探す場所などどこにも……」 そう先生が言いかけた瞬間、先生の背後に縄の巫女…霧絵が現れた。 「先生!!!」 とっさに先生へと手を伸ばすが、強い力で引っ張られ、僕は体勢を崩した。 ぐっと喉が締め付けられる。 「う……っ」 見ると、首に縄が食い込んでいた。 いや首だけじゃない、両手と両足にも縄が絡まっている。 呪いが…成就された、ということか。 「っ…」 体から力が抜け、意識が遠くなる。 ただ、身を裂くような痛みだけが感じられる。 もう、限界だ。 そう思った時だった。 聞こえるはずのない声が僕の耳に届いた。 前へ 次へ [しおりを挟む][戻る] |