Wheel of Fortune〜zero〜
□最終夜 解放

縄殿から出ると、そこには赤い鳥居の道が続いていた。


長い間使われていないはずの地下道に、ぽつぽつと蝋燭の火が灯っている。


辺りはしんと静まり返り、僕と先生だけの足音が響いているはずなのに、たくさんの悲鳴が聞こえてくるような気がした。


ここには僕達しかいないのに、時折誰かが横を通り過ぎる。


その度に凍てつくような霊気が体を包み込む。


息が、苦しい。


「…あれは…!」


ふと先生の声が聞こえて、僕は顔を上げた。


すると、暗闇の中に巨大な門が見えた。


あれが…黄泉の門、なのか?


近づくにつれて闇が深まっていくような気がした。


それでも、僕達には前へ進むしか選択肢がない。


やがて門の前まで辿り着いたところで、先生が風呂敷包みを開いた。


バラバラになった鏡の欠片を、門の前にある岩の窪みに納めていく。


しかし、あと一つ欠片が足りない。


辺りを見回すが、それらしきものは見当たらない。


やはり屋敷のどこかにあったのだろうか…。


「ここには…欠片はないようですね」


「そのようだ。…しかし、もう探す場所などどこにも……」


そう先生が言いかけた瞬間、先生の背後に縄の巫女…霧絵が現れた。


「先生!!!」


とっさに先生へと手を伸ばすが、強い力で引っ張られ、僕は体勢を崩した。


ぐっと喉が締め付けられる。


「う……っ」


見ると、首に縄が食い込んでいた。


いや首だけじゃない、両手と両足にも縄が絡まっている。


呪いが…成就された、ということか。


「っ…」


体から力が抜け、意識が遠くなる。


ただ、身を裂くような痛みだけが感じられる。


もう、限界だ。


そう思った時だった。


聞こえるはずのない声が僕の耳に届いた。

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