Wheel of Fortune〜zero〜
□第四夜 狭間

物音がして後ろを振り返るが、誰もいない。


辺りを見回しても、人の気配はなかった。


気のせい…だろうか?


「…それより、とにかく早く先生のもとへ行かなければ」


メモによれば、先生は災厄を祓う鏡を手に入れる為、神社へ向かったらしい。


そういえば階段廊下の奥に、裏庭へ続く扉があった。


そこから神社へ行けるかもしれない。


「先生…どうか無事で…」


そう願いながら、僕は神社へと向かった。



裏庭を抜けて参道を進むと、赤い鳥居の奥に小さな社があった。


あれが鳴神神社に違いない。


永遠と続く階段を上って行くと、ふと一瞬、社の方で何か光ったような気がした。


次の瞬間、社内から悲鳴と物音が聞こえてきた。


「先生!!」


僕は階段を駆け上がると、社の中へ飛び込んだ。


「!」


社の中には、縄の廊下で見た白い着物の霊と、五肢に縄が掛けられた高峰先生の姿があった。


「先生!!!」


急いで先生の首に食い込んだ縄を外そうとするが、凄まじい力で締め上げられ、どうにもできなかった。


「どうすれば…っ」


そのときふとポケットの中にあったカメラに手が当たった。


僕はとっさにカメラを取り出すと、近寄って来る白い着物の霊に向けてシャッターを切った。


フラッシュの光に霊がたじろぐ。


そのまま続けて数回シャッターを切ると、霊は鏡の中に吸い込まれるようにしてその姿を消した。


霊が完全に鏡の中へ消えると、先生を締め上げていた縄が緩んだ。


「がはっ…」


「先生!!」


倒れ掛かる先生の体を支えると、先生は咳き込みながらゆっくりと顔を上げた。


「雛咲君……やはり君も来ていたのか……」


「先生、大丈夫ですか?」


先生はまだ苦しそうだったが、頷いて立ち上がった。

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