物音がして後ろを振り返るが、誰もいない。 辺りを見回しても、人の気配はなかった。 気のせい…だろうか? 「…それより、とにかく早く先生のもとへ行かなければ」 メモによれば、先生は災厄を祓う鏡を手に入れる為、神社へ向かったらしい。 そういえば階段廊下の奥に、裏庭へ続く扉があった。 そこから神社へ行けるかもしれない。 「先生…どうか無事で…」 そう願いながら、僕は神社へと向かった。 裏庭を抜けて参道を進むと、赤い鳥居の奥に小さな社があった。 あれが鳴神神社に違いない。 永遠と続く階段を上って行くと、ふと一瞬、社の方で何か光ったような気がした。 次の瞬間、社内から悲鳴と物音が聞こえてきた。 「先生!!」 僕は階段を駆け上がると、社の中へ飛び込んだ。 「!」 社の中には、縄の廊下で見た白い着物の霊と、五肢に縄が掛けられた高峰先生の姿があった。 「先生!!!」 急いで先生の首に食い込んだ縄を外そうとするが、凄まじい力で締め上げられ、どうにもできなかった。 「どうすれば…っ」 そのときふとポケットの中にあったカメラに手が当たった。 僕はとっさにカメラを取り出すと、近寄って来る白い着物の霊に向けてシャッターを切った。 フラッシュの光に霊がたじろぐ。 そのまま続けて数回シャッターを切ると、霊は鏡の中に吸い込まれるようにしてその姿を消した。 霊が完全に鏡の中へ消えると、先生を締め上げていた縄が緩んだ。 「がはっ…」 「先生!!」 倒れ掛かる先生の体を支えると、先生は咳き込みながらゆっくりと顔を上げた。 「雛咲君……やはり君も来ていたのか……」 「先生、大丈夫ですか?」 先生はまだ苦しそうだったが、頷いて立ち上がった。 no 次へ [しおりを挟む][戻る] |