小説 | ナノ











相手が教官か、警備員の奴か。なんてそんなことはどうでもよくて。ただ逃げることだけを考えていて。何か、ボールか何かあれば、それを奴にぶつけて逃げることが出来るのに。逃げられない。捕まった。口に何か布のような感触を感じた。次第に薄れていく景色が消えないように腕を上げようとしたが体は動かなかった。






ぐちん、と衝撃で目が覚めた。死にそうなくらいの圧迫感、下半身に鋭利な痛みが走った。痛いと感じるより先に体が痙攣を始める。恐る恐る周りを見渡す。俺を見下ろす奴と目が合った。何だこいつ、笑ってる。笑いに合わせて俺の体も揺れる。下半身の痛みが強くなる。
下半身を見た。ある意味絶景だった。失神したくなる程度には。だって、こいつのアレが俺の尻の穴に。余りの恐ろしさに悲鳴も上げられない。訓練ではこんな怖い思いをしたことはなかった。




白竜くんだよね、あのアンリミテッドシャイニングの。白竜くんはエッチなことに興味あるかな?なさそうだよね〜いつも究極を目指す事しか考えてなさそうだもんね〜。ゴッドエデンってさ、お兄さんみたいな人たちにとっては全くエデンでもなんでもないわけ。何でだかわかる?女の人がね、いないんだよね。別にレンアイしたいわけじゃないんだよ?でも男としてはさ、欲求不満に陥ることがあるわけ。その時発散する人がいないとね〜困るんだよね。わかるかなあ?白竜くんは男の子だけど、肌も白いしまだ男らしい体つきじゃないよね。髪も長くて可愛いよ。顔なんて整っててお人形さんみたいだ。女の子に見立てられないこともない。もう流石にわかるよね?白竜くん、お兄さんと気持ちいいことしようね。



いきなりの激しい律動に、ただただ揺さぶられた。痛い、痛い、痛い!ぶちんぶちんと何かが切れる音がして、中の滑りがよくなった。震える手で男の体を押しのけようとしたが、すぐに手を絡め取られ指と指の間に男の指が入ってくる。これって、恋人繋ぎってやつ、?同時に顔を押し付けられ口に舌が入ってきた。首を振ろうと藻掻くが、全く身動きがとれない。咥内で暴れる舌にどんどん蹂躙されていく。嫌だ、怖い、怖い。と、男の動きが止まった。中に男のものとは違う、更に熱いものを感じた。


「え、ァ、何」

「ああ、ごめんね白竜くんがあんまり可愛くて中に出しちゃった」

「何を、出したって…?」

「白竜くん何も知らな過ぎだね〜純白でいいね」





そして小刻みに動く。気持ち悪くて吐きそうだ。俺の指をするりと抜けて男は俺の胸に手を伸ばした。何の遠慮もなく乳首を強く摘む。その途端体が痺れたように電撃が走った。あれ、なんだろうかこの感じ。気のせいか下半身の痛みも緩和されている気がする。痛くない。のに、何か違和感。男はずるりと自分のものを抜き、それから不敵に笑った。



「そろそろ効いてきたかな?白竜くん薬効くの遅いね〜」

「くす、り」





頭が痛い。ぼんやりしてきた。どうしよう、こんなところで俺はいったい何をしているんだ。うまく息が出来ず、ただただ空気が震えるばかりだった。男は自分の萎えたものにローションをかけ、上下に擦り始めた。何をしているんだろう。何で男のあれはあんなに大きくなったんだ?疑問ばかりがぐるぐる、思考はまともに働いてくれなかった。そしてその大きくなったものをまた、俺の。―――!
先ほどの激痛を思い出し、力の入らない腕で必死に逃げようとした。が、その思いも空しく、ぐちゅ、と音を立てて入ってきた。のに痛くない。代わりに襲ってきたのはとてつもない快感だった。




「い、あああああっ!!!」

「そうそう、もっといい声で啼いてね白竜くん」





によによと下劣な笑みを浮かべる男を睨んでも、目の前は涙で滲むばかりで。口からは自分のものとは思えないあえぎ声ばかりが漏れる。気持ちがよ過ぎて意識がとびそうだ。だらだらと涎が首を伝った。何も考えられない。何も。強過ぎる快楽を抑え込むために腹に力を入れると、男が吐息した。結果的に締め付けてしまったらしいが、今の俺はまともな思考をもっていないのでその感覚にハマってしまい、何度も締め付ける。入ってきた時よりも抜けていく感覚の方が気持ち良い。いやらしい水音と荒い息だけがこだまする。俺は何をしているんだろう。どうしてこんなことになったんだろう。




「白竜くんはエロいねえ、見込みがあるよ」

「い、はぁ、う、アぁ…っ」

「俺の精液、しっかり飲み込んでくれよ」

「精液って、や、あうあっ!」




どくんどくんとさっきと同じ感覚。でも死ぬ程気持ち良くなってた。俺が叫ぶ。何を叫んだか覚えていないけど、男がにんまりと笑ったから、多分とてつもないことを言ってしまったんだと思う。精液って、どこかで聞いたことがある。でも何だかわからない。

俺も何が何だかわからないまま、快感に飲み込まれていって、意識が途絶えた。













白竜が最近何だかおかしい。
いや究極究極言ってておかしいのは今更なんだけど、それだけじゃなくて。時々顔を赤らめて、苦しそうにしてる。風邪かなって思ったんだけど、そんなこともないようだ。サッカーのプレイに支障はないし、人とも普通に接してる。けれど、時々その表情は曇って、無表情に近くなる。そしてそんな日は決まってふっと、何処かへ姿を消すのだ。好奇心が僕を突き動かす。どこにいるのか調べてみたくなったのだ。ふらふらと歩いてゆく白竜を出来るだけ遠くから追うと、白竜が僕の知らない男と出くわした。誰だろう…教官の下っ端か誰かだろうか。男に話しかけられた白竜はうつむいたようだった。男はさり気無く白竜の肩に手を置き、白竜と歩き始めた。僕は気付かれないように後を追う。



男と白竜が入って行った場所は、ロッカールームか何かだろうか。ガチャリ、と鍵がかかる音。何をするのだろう。まさか極秘の特訓なんだろうか。それならば覗きとは悪いことをした。しかし次の瞬間聞こえてきた白竜の言葉に、僕の考えはなし崩しにされることとなる。




「もう、一週間待った。はやく抱いてくれよ、辛い」

「随分淫乱になったもんだね」

「お前のせいじゃないか…」




何だ、こんな白竜の声、知らない。甘ったるい何かを誘いゆらめく様な声。こんな白竜は知らない。僕はたまらず廊下に座り込んだ。くちゅくちゅと卑猥な音がする。なんだ、なんだこれは。足の震えが止まらない。甘い吐息。服の脱ぐ音。嫌だ。聞きたくない。頭を抱えても、響く音。ぴちゃぴちゃと何かを舐める音。白竜が喘ぐ。涙腺を刺激した。




「もう、やめてくれ…」


小さく小さく呟いた。声は扉の向こうの喘ぎにかき消される。離れたくとも足が動かない。途中何度も白竜の「好き、愛してる、」を耳にした。切なさを含んだ喘ぎは、やがて大きく強く、はっきりとしたものになってゆく。ぐちゅぐちゅ、あっあっ、その繰り返し。ループ。



「白竜くんかわいくなったね、最初とは大違いだ」

「うるさっ…はぁん、んあ、んあァっ」

「俺好みにもなったよ」

「それは、まあ…うれしっいけ、どっン、」

「やっぱり見込みあったね」

「は、うあっ…もう、いく、ぅ、っ」

「いいよいってよ」




ひと際高い嬌声が耳に届いた。僕は何が何だかわからないまま必死に足を動かし、立って走った。足音なんか気にしなかった。どうでもよかった。だって、絶望しか見えなくて、息も詰まって、逃げること以外何も考えられなかったのだから。
途中何度も転び、むせび泣きたい気持ちでいっぱいになった。









そして何事もなかったかのような次の日を迎える。


「シュウ、今日はこっちのフォーメーションを調整したい」


僕だけが苦しむ。その裏表に、絶望を味わう。



彼は人知らず、表情を曇らせた。













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