小説 | ナノ






※学パロのようなもの





「ねえ嗣美」

「何」

「大丈夫?」

「別に平気だよ。痛くない」




間桐雁夜が苦悶の表情を浮かべて、眉を垂れた。衛宮がそれを見て何故君が辛そうな顔をするんだいと言う。私はそっと衛宮の肢体を盗み見た。ほどよく肉ののった体は見たところ、外傷はない。私は素早く手帳を開き今日の日付に印をつける。
私の行為を見てか、取り巻きという鬱陶しい存在に声を掛けられた。



「言峰くん、今日何かあるの?誕生日とか?」

「…いや、」

「じゃあ、放課後遊びに行かない?」




間に合っている、という発言も面倒になり私はその場を足早に立ち去った。早くしなければ衛宮を見失ってしまう。



衛宮嗣美は割と地味な印象の一つ上の学年の女だ。スタイルが良く物腰が柔らかい為、なかなかに男の視線を惹きつける。人気という程ではないが、告白されたら迷わず承諾するレベルである。本人には全くその気はないようだが。




つい先日のことだ。私は図書室で時間を潰したのちに本屋に立ち寄った。ぶらぶらして真っ暗な帰路を歩いていると、公園から女の悲痛なくぐもった声が聞こえた。心なしか嫌だ、とかやめろ、といった否定の言葉ばかりが耳に入る。
嫌な予感に自然と忍び足になった。


公園の一角で、衛宮は犯されかけていた。プリーツスカートから覗く白い脚を暗闇に惜しげもなく晒し、男に乳房を揉みしだかれている。男は荒い息で衛宮の足を開いた。衛宮はぼろぼろ涙を流しながら嫌だ嫌だと震えている。






「やめろ…私…今日は…、…んだ…」




か細い声は私の場所までは届かなかったが、男には十分聞こえていたようで明らかに男の態度が変わる。男は衛宮の下半身に手を伸ばした。衛宮が引きつった声を出す。



「いや…っ来るなっ!変態!」




衣擦れの音がしたころを見計らって私は音も気にせずに修羅場に入っていった。突然の来訪者に動揺している男を数発殴り蹴り飛ばすと動かなくなった。衛宮の表情を伺う。
衛宮は呆然と私を見ていた。ずれた下着に赤いものが見えた。下着と性器の間を繋ぐ糸のようなそれ。ああ、と思う。彼女は顔を強ばらせ、ただ一言、見ないでくれとだけ呟いた。
今にも壊れそうな小さな体を見て、寒気にも似た何かを感じた。











それから早一ヶ月。衛宮と直接的な関わり合いはないが、私が衛宮に関する事で知っていることといったら、もうすぐ月経が訪れるだろうということぐらいだ。特に女に興味は無かったのだが、普段目にすることのできないものを見て柄にもなく興奮をしているようだった。




衛宮が私の視線に気付いたのか目線を上げる。と、一瞬複雑そうな表情をした。恥部を見られた相手なのだから分からなくもないが、一応恩人でもあるということを忘れないでいただきたい。
しかし私の思いが通じたのか、衛宮は私の傍に寄ってきて、礼を言うよとふんわり笑った。柑橘系の香りが鼻を掠める。

いい匂いだと思ったが、これは経血のにおいを隠すためにつけているのだろうかと考えると胸が高鳴った。それなら経血のにおいの方が気になるではないか。
目を細めると、衛宮は口をきゅっと結んでやるせない顔をした。私を警戒したのだろうか?
そして間桐に呼ばれて戻っていった。





「どうかしたのか?」

「ううん、ただ…彼って格好いいな」

「言峰だっけ?ああいうタイプ好きなのか?理解出来ないな」

「違うよ、そういうことじゃない。ちょっと…ね。」




衛宮の言葉は、私には届かない。







あまりサボタージュなることは好きではないのだが、私は授業中の廊下を堂々と歩いていた。堂々としていた方が案外何も言われないものである。向かう先は女子トイレだ。







女子のふざけた会話にも、聞いておいて損のないことも時たまある。例えば、(トイレの場所を決めている)だとか。



「私?私はね…奥から二番目だよ…って、何でそんなこと言わせるんだ」




困ったように照れた顔。無表情な彼女がほんの少し表情を変えると、他のどの女よりも愛らしい顔に見えた。


しっかり確認した。ポーチを持ってトイレに入ったことも。抜かりはない。女子トイレに入るときも出るときも一人だった。他に誰も、女は入っていない。



迷いもなく奥から二番目の個室を開ける。ナプキンを入れるケースを開けると、運良く一つだけ丁寧に丸められたナプキンが入っていた。それをビニール袋に入れて密封する。ポケットに入れ、何事もなかったようにトイレを出る。そのまま高校を出る。驚くことに罪悪感の欠片もなかった。






アパートの味気ない一室でビニール袋の中身を取り出す。血だ。血の色。あの女の子宮の内壁が剥がれ落ちた、いわば芥だ。
息を飲んだ。血に触れてみたがナプキンに吸収し尽くされてしまっていて、感触はさらさらとしたものだった。少しつまらないと思ったが、唐突に。そう、本当に唐突に、血の広がった形を見て、体の中心が疼いた。意味がわからなかったが欲の赴くままに私はスラックスのジッパーを下ろす。息が荒くなる。衛宮を襲った男のように。何を考えているのだろうか。いや、何も考えられない。浮かぶ情景は犯されかけた衛宮の体と、血の染み着いた下着。真っ白な下着に、赤が。



「っ――――う、」




白い劣情がナプキンに付着した。赤に白いものが乗る。何ともいえない微妙な気持ちになり、汚れたナプキンをゴミ箱の底に叩きつけた。










「今日は重い日なんだ…気分が憂鬱だよ」

「あんまり辛いなら帰れよ…」

「嫌だよ。私はもっと雁夜と一緒に居たいからね。」

「は!?何言ってんだよ!?」

「冗談だよ」





通りすがり、彼女と目が合った。彼女はやはり柑橘系の香りがした。
気づいたら、私はアパートの一室に戻っていた。学生鞄の中には二つナプキンが入っている。どうしたことか。頭を抱えた。ビニール袋から出すと、前とは違い異臭がした。そんなに時間が経過していないものなのだろう。その異臭は、多分相当嫌な臭いだ。しかし不思議と臭いと感じなかった。

俗に言う自慰に耽っていた。衛宮の子宮のかすを使って己の煩悩を鎮めているのかと思うと吐き気がしたが、まあ血だと思えばどうって事あるまい。臭いに加え、今回は経血の感触もリアルに感じとった。妙に粘り気がある。結構好きな感触かもしれない。

生理が重い重いと腹を抱えていた衛宮の姿を思い出す。まだきっと生理は終わらないだろうと、そう思った。いや明日辺り終わってしまうかもしれない。ナプキンを二つともゴミ箱に放り投げた。
すでに贋者では満足できないと理解していた。本物が必要だ。ナマミが、要る。


要る。















「…言峰…何か用かな…?」



柔らかな、それでいて他人を寄せ付けない微笑みを衛宮が浮かべた。誰もいない廊下の一角で、私は衛宮に声を掛けている。授業時間トイレの帰りであろう衛宮を捕まえたのだ。





「見たところ調子が悪いわけじゃあなさそうだね。用事でもあるのか?」

「…まあ、な」

「私、授業に戻りたいんだけどいいかな」




私の横を通り抜けようとした衛宮の腕を掴んだ。その勢いで引き寄せて、唇にかぶりついた。
驚きと衝撃に固まる衛宮に囁いた。




「デートをしよう、衛宮…いや、衛宮先輩」





羞恥かなんなのか、衛宮の顔はほんのり朱がさしている。これで私に少しでも好意を持っていることは把握した。












愉快だ。実に愉快だ。滑稽であり愚劣でありなんとも奇天烈な終わりである。私は今非常に満たされている。愉しい。

腰を揺らすと、自身にねっとりとした血が付着しているのが見て取れた。衛宮の獅子が唸るような声がアパートの一室にこだまする。白い肌。愉快だ。赤い血。ああ愉快だ!思わず口角がつり上がる。
衛宮は私に犯されている。無遠慮に秘部を暴いたため衛宮の性器からは経血ではない血液も漏れている。経血の海に沈んでゆく感覚。臭いがする。昨日よりずっと濃い臭いだ。







「…抜けよっ…ことみね…どうしてこんなっ…」

「……。」

「…妊娠、したら…っどうしてくれる…っ」

「生理中は妊娠しないものではないのか?」

「関係ないっ…するときは…す、」

「そうか…それはそれは」




えげつない事をしてしまったものだ。だからと言って避妊具をつける気は更々なかったが。痛みに耐える衛宮を抱えた。啜り泣く衛宮の首筋に噛みつくと、死にたいと声を上げた。死ぬなと、唇を舐めた。





「言峰は…私のことが好きなのか…?」

「どうだろうな?」

「……嫌がらせなのか、こんな」

「確かなことは、…衛宮、お前の血が好きだということだ。」

「ひっ…!」





繋がった部分に手を這わすと、衛宮が反射的に逃げようとした。腰をがっちり掴んで性器を入れたままの恥部に指を突っ込む。衛宮がしゃくりあげる。もう言葉も出てこないようだった。




「うぅああう、っひぃ、…!」

「これが、好きなのだよ私は」



指を抜くとてらてらと光る経血が絡んでいる。恍惚にうっとりと目を細めた。反対に衛宮は目を見開く。




「…わたし、は、言峰は、こんな人だなんて、思って、なくて、」

「そうか」

「心底がっかり、してるし、殺してやりたい、」

「まあ私の子を孕むことになるかもしれんがな」

「…う、ぅう、」





衛宮の目から大粒の涙がこぼれ落ちた。レイプされて号泣する彼女は普段の彼女よりずっと魅力的で煽情的だった。彼女は聡く既に諦めの感情を顔に浮かべている。行為の激しさに経血が布団に染み込む。その様子にすら欲情する。いい臭いだ。いい臭いだ。いい、匂いだ。
全て赤に染まってしまえばいい。






「衛宮、さっきの問いに答えよう。私はきっとお前が好きだ」

「嘘を、つくな変態…う、いた、い…っ」

「でなければお前の経血なんて好きになるまい」

「…、死ねばいいっ…!」





ねっとりと、ゆっくりと、時間をかけてねぶる。衛宮が私の子を身ごもって絶望する顔が見たい。何、産ませればいい。可愛がればいい。そうせざるを得ない状況に仕立て上げればよい。どろどろと溢れる経血は留まることを知らず、染みは広がってゆく。まるで衛宮の涙のように。ああいい臭いだ。興奮は未だ収まらない。





「死ぬならお前の経血に溺れて死にたいぞ、衛宮」






行為を始めてから、初めて中が締まった。怒りによる締め付けだったのだろうが、私の気分を良くするのには十分なものだった。




















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