吐溜 | ナノ





「あっヒロトさん!」



狩屋の弾んだ声に、霧野先輩がぎゅるん、と振り返った。目にも止まらぬ早技。10点。

見ると監督に会いに来たのかラフな格好をした基山さんがいる。ぴょんぴょん効果音がつきそうなほど跳ね回って基山さんのところまで走っていく狩屋。



「ヒロトさん捕まえたー!」

「ははは、久しぶりだねマサキ、元気にしてたかい?」




基山さんに抱きつき笑っている狩屋を見て微笑ましいなと思っていると、何やら横から黒い妖気のようなものを感じる。言わなくても分かるだろうが、霧野先輩からもれている。



「はー、あんな事してもらいたいなー、なあ剣城」

「すみません、俺は先輩じゃないので特に思っていません」

「えー?何だよお前狩屋のこと好きなんだろ?」

「…まあ」

「俺もだ」

「聞いてませんよ」

「つまり、俺もお前もあんな風に狩屋にぎゅっとしてほしい」

「……。」



洗脳されている気がしなくもない。基山さんが帰り支度をしているのを見て、ぐずる狩屋。また来るから、と狩屋の頭を撫で宥める基山さん。ああ微笑ましいなと思っていると。




「はあー俺が頭撫でたらミルワーム食べてるような顔するぜきっと」

「その表現はアウトです。うっかりミルワーム検索する人いたらどうするんですか」

「ミルワームを検索するときは覚悟を決めて検索してね!」



そこではない。ミルワームから離れよう。
少ししゅん、としている狩屋に近づいていき、頭を撫でた。霧野先輩の奇声が聞こえた、かもしれない。きっと気のせいだ。




「すぐ来るだろきっと」

「…剣城くん!」

「う、わっ」




抱きつかれた。見たくない。霧野先輩の方を見たくない。そこには般若がいるんだろうきっと。
覚悟を決めて振り返ると霧野先輩が目から血を流して倒れていた。あー、と思いつつも、狩屋をふりほどいてまで助けようとは思わなかった。








呼び方合ってるんだろうか
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