吐溜 | ナノ




やあ、とヒロトが手を振る。俺はわざとらしく肩を竦めてその行為を無視した。苦笑しながら近付いてくるヒロトに、十年前は絶対にしなかった笑みを浮かべてやった。
大分お高くとまってしまった彼と話すのは久しぶりだった。けれど清々しさはあったし、心地好い空気も感じることが出来た。



「涼野はどうしたの?」

「呼んでない、こないだろうなと思って」

「まあ、こんな暑い日には誰だって出たくないよね」

「かき氷でも食べたいよなー」



アスファルトがゆらゆらと、蜃気楼のように揺れる。真上の太陽の光と陽炎のせいで道路の向こう側が全く見えない。眩しくて目をそらすと、あの頃のことが蘇る。


「円堂君は、相変わらずだったよ。いつだって世界をいい方向に導いていた。今もね。」

「知ってるよそんなことは」

「そうだよね、雷門の活躍、凄まじいものね」



ぎちぎちに張って今にも引きちぎられそうな縄に掴まり、奈落の底に落ちないように必死で生きていたあの頃。終わりが見えかけたとき、一筋の光がここを救って。そいつがまた、守るべきものを守ろうとしている。




「やっぱりよーアイス食いてえアイス」

「この辺にコンビニあったっけ?」

「ない」

「…諦めなよ」













十年経ってもあなた達は変わらないままで
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