「…なんか、狩屋いいにおいしない?」
「え?」
部活が終わって、着替え中に天馬くんが引き寄せられるようにやってきた。目ざとい?…というか鼻ざとい?
「汗臭いのやだから、イチゴのボディークリーム塗ってみたんだよね」
「制汗剤でいいじゃん」
「香りがずっと続くから好きなんだ」
「…女子高生か」
「あーッ!今剣城くん言っちゃいけないこと言った!言った!」
「そうだよ剣城!狩屋イチゴ似合うよ!すごいかわいいよ!」
「天馬くんそれフォローになってないいぃ」
明るさ三割増しの天馬くんが言うと何でも正しく聞こえるね。ってそうじゃない。
背後から嫌な気配がする。
「おいで、狩屋!」
ちっちゃい子を相手するように手を叩いてきらきらした目で俺を呼ぶ霧野先輩。殴りたい。けど我慢。
「嫌です」
「ぶー」
「あー、全国の霧野ファンに見せられませんねその顔は…」
「イチゴの香りの狩屋なんてテンション上がっちゃうよね!」
「先輩何キャラですかそれ」
「空野あたり」
「帰ろ」
「なー!はやく!こっちこいよ!」
「やです」
「先輩命令」
「うわー!こんな顔して中身ヒドイ」
攻防戦の結果完敗し先輩に体を許す状態になってしまった。すんすん、と首に顔を寄せられる。香り付けしたとはいえ汗をかいた後なので正直人を近寄らせたくない。
「先輩もういいでしょ」
「やだーもうちょっとー」
「もー、そんなに好きならボディークリームあげますよ。どうぞ。」
バッグの中から出したクリームには見向きもせず、先輩は嬉しそうに俺を抱きしめている。
「ふふふ、わかってないなー狩屋は」
「はい?」
「狩屋じゃなきゃ意味がないんだ」
「…はいい?」
「…つまりイチゴの香りがどうであれ狩屋に抱きつきたかっただけだろ?リア充乙俺は付き合いきれないいいよな?いいよな?ロッカーの鍵かけていいよな?」
「キャプテン落ち着いてください目が血走ってます!」
「先輩はともかく狩屋は可哀想なんでやめてあげてください」
「ちょっと剣城は黙ってて!!」
安心の神童さんオチ