いつかそちらにゆくと分かっていながらも、それまで忘れないとは限らないのでこうして筆をとりました。
あなたは、そちらでもお元気になさってますか。
あの日のように、いつもと変わらないあたたかな微笑みに、溢れんばかりの優しさを湛えているのでしょうか。
太陽にも月にも近いそちらは、きっととても明るくて暖かくて、日向を好むあなたには素敵な所ではないかと思います。

近年(使い方あってるかな)、私はかつての同士と再会しました。
そいつは今でも世を憂い、あなたの意志を継ぐのだと勝手に燃えていました。
久方ぶりに会ったアイツは、今では昔のように共に茶を飲むことも難しい、厄介な野郎になっていました。けど昔と違って、安い甘味なら奢ってくれる便利な野郎にもなっていたので、アイツの好意を尊重して奢られてやっています。とても便利です。
それからは互いに少しずつ会う機会も増えて(私は不本意なんだけど)、その度に小難しい話とか説教ばかりされるようになって、アイツは私の母ちゃんになりたいんでしょうか。めんどくさいです。
でもそんな所はあの頃からちっとも変わっていないので、いつかそちらで会えたらあなたも安心すると思います。いや俺が安心したとかじゃないんだけど。違うからねこれ。
昔から変わらない髪型も、ついに先日ヅラになりました。頭頂部はバーコードなのにサイドからは相変わらず憎らしいくらいのストレートでした。
だから今度からはヅラと呼んでもそれが正式名なので、からかいがいが無くなってちょっと残念です。

同士といえば、もう一人にも会いました。分かっていると思いますが、あのチビです。
何年か前の、終戦記念の夏祭りで偶然会いました。相変わらずチビです。
祭を台なしにした後、江戸までブッ壊すとかぬかしてやがりました。
あなたがいってしまってからと、戦争が終わってから、アイツは変わってしまいました。チビは変わんないのに。
仲間や部下を沢山作って大所帯になってたのには笑ったけど、でもアイツはあなたが大好きなので、どれだけ人を連れていても、寂しいのだと思います。
そういえば、アイツは世界を半分失っちまいました。何でもない風にしてるけど、無くした世界はどこにもなくて、あなたでなければ埋められないくらいにデカイ穴が空いてしまいました。
それを埋めたいのに、結局寂しいからって馬鹿な事ばっかりしやがるから、毎回私は被害を被ってます。
けど、俺が行かなきゃ誰も止められない気がして、勝手に身体が動くんだよ。俺ってすげえめんどくさい。
アイツは頭が良いから、周りがどんなに言っても聞かないんです。そんでまた私やヅラを巻き込むんです。迷惑な話です。
迷惑だから、いつか絶対止めてやるって決めたので、もしそちらで会っても、どうか叱らないでやって下さい。
アイツはあなたがいなくて寂しいだけなので、そうじゃなくなればあの頃みたいなチビ杉に戻ると思うんです。
片目がなくてもびっくりしないでね。


それから、あなたがいなくなってから、私よりもっとモジャモジャした野郎と知り合ったんです。
戦時中は共に戦っていたそいつは、今では宇宙を飛び回ってるので、もしかしたらすれ違っているかもしれないですね。
ヅラに変な生物を送り付けたり、私の家に墜落してきたり、スゲー迷惑で人の名前をまともに呼びもしない毛玉です。
なのに、たまに、本当にたまーーーにだけ、あなたと眼差しが似ているのです。錯覚だと思いたいけど。
いつでも広い視野で世の中を見渡して、手前の出来る限りの力をもって、護りたいものをしっかりと護っているのです。蓮蓬からは微妙だったけど。毛玉の割にはよくやってる野郎です。
いつか紹介するかもしれないです。


長くなってしまいましたが、ヅラはいつまでもあなたを敬愛し髪を伸ばしていて、昔と変わらない筈なのに、最近はふとした瞬間どこかあなたに似た背中をしています。
高杉はいつの間にか生意気にも煙管を愛用するこ洒落た大人になっていました。ちょっと前に三味線を弾きながら俺に笑った口元が、何となくあなたに似ていた気がします。普段はいやらしい笑い方しかしないくせに。
毛玉は坂本という名前です。
あなたの事を話したら、いつか会いたいと言っていました。頭を撫でる手があったかくて、あなたみたいです。似てないけどね。似てないよ、断じて。けど、うん、ちょっとだけな。うん。うん。

他にも色んな奴に会ったし、別れもしたけど、かなりめんどくさい奴らもいるけど、それなりに楽しくやっています。
あなたに褒められたいので、俺はこの先も笑っていようと思います。
あなたにまた頭を撫でてほしいので、俺はこの先も、この手が届く範囲は護り通してやろうと思います。
あなたに呼んでもらえた色(なまえ)に恥じることのないように、輝い(いき)てみようと思います。
もう少しだけ踏ん張るので、疲れ果てたその時は、あの日みたいに名前を呼んで手を握ってくあの頃みたいに甘味をくれたら嬉しいです。

久しぶりに筆をとったら指と手首が疲れました。
また何かあったら書こうと思います。
多分昔よりはきれいに書けているので読めなくはない筈です。

いや、長ったらしいからやっぱり読まなくていいです。

それじゃ先生、また今度。


銀時

P.S
手紙を書くのは苦手です。

P.SのP.S
敬語ってなんですか。それは食べ物ですか。ヅラの好物ですか。









P.SのP.SのP.S
先生。俺にもまた家族と呼んでくれる奴らができました。
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