結局ブーケを泣く泣く渡して、細い通路のドアを開けた瞬間マネキンが沢山ある通路に出た。うえっ気持ち悪…って失礼か。ごめん。
襲いかかってくるかなと思い二人で走り、次の部屋へと急ぐ。


だけど次の部屋は沢山の女の人の絵に、首のないマネキン。ドアもあちこちにあってなんだか嫌な予感しかしない場所だ。
警戒しながら歩いて行くと、いきなりガチャっと音が響いてドアが開いた。
びっくりしてドアの開いた方を見やると



「…!スイ!!?」


「イヴちゃん……!?!?」



赤い瞳の、赤い薔薇。はぐれちゃったはずのイヴちゃんがドアから出てきた。ちょっとやつれてる気がしたけど出会えた瞬間明るい表情になった。
うわああああイヴちゃんだああああ!!!!



「よかった!大丈夫!?無事だったんだね!痛いところない!?」


「うん!スイは?」

「全然!ああ本当良かったああぁ…!」


お互いにぎゅうっと抱きしめ合う。私はイヴちゃんを確かめるように撫でる。イヴちゃんは私の服をしっかり握りしめていて、その仕草が本当に可愛くてイヴちゃんなんだなぁと実感し、嬉しくなってそのまま抱きしめ合ってたら



「ええっ…と…」



ギャリーが隣で呆気にとられていたので、急いで私はイヴちゃんをギャリーに紹介し、ギャリーにイヴちゃんを紹介し、そしてお互いに自己紹介をしていた。ギャリーはやっぱりイヴちゃんにも「敬語と敬称は…さん付けはいらないわ!」と言っていた。何この光景微笑ましいなオイ。

その後パリーンと何かが割れる音がし、その音の方向に振り向くと女の人たちが絵から出てこっちへ向かってくる。



「…っもう何よ、まともに挨拶もさせてくれないってわけ!?」


「と、とりあえずこの部屋に入ろう!」




二つ部屋があるうちの右側の部屋に入った。でも女の人は入ってくるかもしれないからギャリーと二人でドアを警戒してたら、イヴちゃんが私の服の裾をひっぱり、



「スイ、あの女の人はドアは入ってこれないんだって。」

「え?どういうこと?」



どうやら口さんに飛び込んでバラバラになった後、イヴちゃんは必死に出口を探すため調べていたら本に書いてあったらしい。

イヴちゃんが一人になった後、何があったか詳しく聞いたら、
どうやらイヴちゃんは「あ」「うん」と書いてある像の部屋で赤い女の人に襲われ、その後変な絵本を読まされ(その話題を出そうとしたイヴちゃんは顔が真っ青だったので詳しくは聞けなかった)ドアをあけたらこの部屋だったらしい。



「この右側の部屋と、左側の部屋はもう謎解きした、よ」



マジでか!!
イヴちゃんすげぇええ!!!何この子めっちゃカッコいいんだけど!素敵!
ギャリーも本棚の本を読みながら「凄いわね…」と感心してた。そしてイヴちゃんにも私たちの状況を伝え、とりあえずこうしててもしょうがないから前に進もうと話し合った。


「だけど外には女の絵があるから、危なくなったらすぐ逃げてね。」




と三人での約束ごとをして、そして意を決してドアの外に出て、女の人を避けながら向こうの部屋に飛び込んだ。

そこには鏡しかない小さな空間。三人で映りこみ、イヴちゃん小さくて可愛いなあとニヤニヤしているとギャリーは真っ青な顔。ふとギャリーを鏡ごしに見ると


ギャリーの首に、マネキンが映っている。


「な、なによこれ!この…!」


ギャリーは怒りに任せてマネキンを蹴ろうとしていたので慌てて二人で止める。ギャリーは「大人げなかったわね…」と反省していた。ギャリーが早く出ましょ、と言って早々に出てったのでその後を追う途中、私は見てしまった。


マネキンが、一瞬だけニヤリとしていたのを。


そして、





「 ア ソ ボ ウ 」



と呟いたことも。











その後、私たちは女の人から逃げるようにソファーのある部屋に入った。だけどその途端イヴちゃんはさらに顔を真っ青にした。



「どうしたの?」



「あの絵…」



ソファーのすぐ後ろにデカい絵があり、その題名は「ふたり」。妙に現実味のあるリアルな絵だなと思いしみじみしてると、イヴちゃんは「お父さん、お母さん…」と言った。
ギャリーは「!?あれ、イヴのご両親なの!?」と叫んでいる。えええマジでか!めっちゃ美人!!って違う!馬鹿野郎!!



「お母さん、お父さん…どこ…?」


イヴちゃんがフラフラしながら「ふたり」の絵にしがみつく。その光景はあまりにも痛々しかった。そうだよね、やっぱり辛いよね、



「イヴちゃん、」



ぽんと頭を撫でて、イヴちゃんを抱き寄せる。



「大丈夫、私が絶対にお父さんとお母さんに会わせるから」



それまで一緒に頑張ろうね。
そう言って背中をさするとイヴちゃんはぎゅうっと強くしがみついた。まだこんな小さい子が女の人に追われたりするの、怖いよね、もっと守ってあげたらよかった。

だけど。
いきなり部屋中に地響きのような、重い音がなる。嫌な予感しかしない。
ギャリーも慌ててドアを開けようとしたが開かず、「どういうこと!?」と焦っている。
そして部屋の窓から女の人が突き破ってきた。
嘘でしょ!?空気読めよ!!!



「ギャリー!」


ドアの方にいたギャリーの方に窓から侵入した女の人が迫る。ギャリーは自分の薔薇を守りながら私たち二人の方に走ってきて、お互いに手を取る。
イヴちゃんもフラフラしながらも立ち上がり、しっかりと私の手を握る。
こんな狭くて物がごちゃごちゃしている場所だと走りにくい!けど、逃げ場がない!


そうしていると次は壁からも女の人が。
ちょおまっ、てめぇら女じゃねぇだろ!!!てかなんで壁も窓も突き破れるのにドアは開けられないんだよ!!!
と一人でつっこんでいる場合も勿論無く。そしてギャリーが「あの壊れた壁から脱出できるわ!」と言って私達をひっぱった。
その後を追うように二人の女の人が追っかけてくる。なんとか部屋から脱出、したはいいが。




「…ちょっと、冗談じゃないわよ」




部屋から脱出しても女の人がうじゃうじゃいて、道狭しといった風にこちらに向かってくる。違う部屋にかけこもうとしてもマネキンがドアをふさいでいる。
私はイヴちゃんに急いで私の背中に乗ってもらうよう言い、そしてギャリーの手をつないで必死に奥へ進んだ。



「あそこ!ドアが開いてるわ!!!!」



女の人や首なしマネキンたちを潜り抜け、ドアへ一直線に走る。
私がドアへ逃げ込もうとすると、どこからか声が聞こえてきた




「 ア ソ ボ ウ 」
「 ネ ェ 」
「 ズ ッ ト 」



「スイを 待っていたんだよ?」





「大好きな、私の愛してやまない」






アナタを。




(どこかで聞き覚えのあるような声がした)

(最後の声は)


(なんだか、まるで、)















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