※ギャリー視点







「わぁっ綺麗なブーケ!」



ふぁさっと絵から飛び出てきたピンクの薔薇のブーケ。スイは嬉しそうに大切そうに受け取って喜んでいる。
初めて出会ったときと違って大分子どもっぽくて無邪気でさっきとは大違い。



初めて会った時も、さっきの灰色の間の『ラビリンス』の所でも、スイは怖がりながらも勇ましく慎重に前に進んでいた。
アタシは最初怖気づいたというのに。アタシの方が年上なのに情けないわね。


でも時々さっき彼女が一緒にいた『イヴ』という女の子の心配をする。アタシと自己紹介したあとも沢山調べたんだけど、鍵がかかってて行けなかった。
彼女は酷く絶望した顔だったけど、『イヴちゃんなら大丈夫!』と明るく振る舞った。きっと凄く心配しているのに、アタシに迷惑かけないように。



そうよね、皆ここに迷い込んで凄く不安だし怖いのに、アタシが逃げてちゃダメよね。
彼女の細くて小さな背中を見て、そう決心した。




「あ、ねぇみてギャリー!」

「…え?あ、どうしたの?」


そう考えこんでいるとふとスイがアタシのコートを引っ張る。アタシの方が身長高いからスイはアタシのことを上目づかいで見るような形になり、思わずドキっとする。
ついでに言えばスイの服は少し薄手なので、アタシがさっき初めて会った時に転んで思わず触ってしまった部位に目が行く。


ああもう!意識しちゃってバカみたいねアタシ!これだから男って!


ぐっと左手を握り、何事もなかったかのようにスイに返事するとスイは「このブーケの薔薇、大輪だよ!」と言った。は?



「え…そ、うね?」


「ピンクの薔薇が大輪だったら『赤ちゃんが出来ました』っていう花言葉になるんだって!」




ぶはっ、と思わず吹いてしまうとスイは「えっどうしたの!?」と慌てた。なんでそんなの知っているのよ!
スイはアタシの気も知らずそのブーケを持ったまま『幸福の花嫁』『幸福の花婿』になった絵に話しかけた。




「花嫁さん、花婿さんおめでたなんですね!良かったですね〜」


「ちょっと、絵が喋るはずないじゃない」


「いや、さっきアリさんも唇さんも、青い服の女の人も喋ったからきっとこの人も喋る」


「えええええ!?」



スイは何故かキリっとした表情でそう答える。もう…アタシさっきから驚いてばかりで疲れたわ…。ぐったりとしているとスイは「あ、」と思いついたように声をあげた。




「私の薔薇、全回復になったら大輪になるのかな?」



「…ふふっそうしたら、赤ちゃんが出来ちゃうわね。」



真剣に悩んでたスイにちょっと冗談交じりにそうアタシが零すと、スイは乾いた笑いでアタシに話しかける。


「でも、相手いないからな〜」


「え?そうなの?スイならいそうなのに」



スイはいやいやと頭を振る。ちょっと意外ね。すると逆に向こうが「ギャリーはいないの?彼氏さん」と聞いてきた。…彼氏?





「ちょっちょっと!アタシ確かにこんな喋り方だけど男捨ててないわよ!」


「え、あ、すみませんすっかりそういう人かと…」


「なんで敬語なのよ!」



すると先ほどの新郎新婦から笑い声が。うわっ本当に喋るのね。スイは「もーギャリーってば面白い!」とけらけら笑ってた。
本当、こういうところは子どもっぽいのに。言葉と行動が一致してなくて調子狂うわ…。



「とにかく、前に進むわよ、イヴちゃんとやらを探すんでしょう?」




「…うん。」




あ。
彼女の目が暗くなった。ダメね、アタシ。こういう気遣い本当出来ないんだから。
少し申し訳なくて彼女の頭を撫でると彼女はびっくりしていたけどにっこりと笑って「ギャリー、ありがとう」とお礼を言われた。
その笑顔が凄く暖かくて安心して、アタシは「いいえ、アタシこそありがとう」とつられて笑った。




そういえば、
大輪じゃないピンクの薔薇の花言葉は



















『暖かい






(「えへ、えへへへ…おはないいなぁ」)

(このブーケはダメ!あの二人の子供だもん!)

(色々混ざってるわスイ!)










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ピンクの花言葉は『暖かい心』以外もありますがあえて抜粋。
夢主の性格がラビリンス


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