「話が、あるの」


ギャリーが神妙な顔でそう呟くから思わず息を飲んでしまうけれど、大丈夫。…このままなんとか誤魔化すこと、できるはず。頑張れ、私の体!



「…そ、そんなの、向こうに帰ってから聞くよ!急がないと、さ!額縁戻っちゃうかもよ!ね!」



汗だらだら、笑顔はひきつっているのは自分でもわかっている。だけどここで妙に気を使われたくない、だってこれは私が自分でやった行動の結末だ、ギャリーはきっと優しいから心配してくれるだろうけれど、巻き込みたくない。

むこうで、二人と過ごして欲しい。
だからお願い、早く絵の中に!



そんな私の願いもむなしく、ギャリーは私の側へ近寄ると手をとり、ギュッと握る。いきなりすぎる彼の行動に戸惑うけれど、表情が真剣そのもので思わず見入ってしまう。いつものギャリーと、なんだか違う…?




「今、聞いてほしい」


「!」



初めて聞く彼の低い声。いつものオネェ言葉じゃないし、顔は真剣そのものだ。もしかして、ギャリーはもしかして



「…アタシね、今まで他人なんかどうだっていいって思っていたの」

「え…?」



「皆、アタシを変態だと…イカレた奴だという目をしてみるの。アタシがこんな中途半端な立ち位置にいるから。アタシはそれでもどうでもいいわって思っていたわ。他人の評価なんて、他人なんてって。

…だけど、今は違う。」



ぎゅっと握ると、ギャリーは眉を下げて泣きそうな、切ない顔で私を見て叫ぶ。




「アタシは、今スイに死んでほしくなんかないわ!」


「!ぎゃ、りー」


「どうだっていいなんて思えない、ほっとけないのよ…!」






ああ、やっぱりバレてた。ギャリーは優しいな。だけどね、私はこれで後悔なんてしてないよ。メアリーちゃん、イヴちゃんを助けることが、守れることが出来た。ギャリーだって無事だ。それだけでもう十分。その気持ちだけで私は救われるよ、ギャリー。

だから、そんな顔しないで。



「ごめんね、」


「スイ!」


「私、イヴちゃんやメアリーちゃん…そしてギャリーに出会えて本当に良かったよ、それだけでもう、十分なんだ。…大丈夫!」



にこりと笑うけれどもう私の身体は末期が近い。深呼吸をしなければ言葉も離せないほど息が苦しい。だけど最後まで心配かけたくない。こんな自業自得な行動で憐みの目なんかで見られたくないの。ごめん、ごめんねこんな弱い女で。




「ふ…っ、ざけるんじゃないわよ!」


「…!?ギャ、リ…んっ…!」



ギャリーはいきなり私を引き寄せると、そのまま顔を近づけて口づけをする。かれの柔らかい唇が冷たく、そして次第にギャリーの酸素が口内いっぱいに広がって私は呼吸しやすくなった。だけど、それよりも彼の唇が私の唇を貪っているほうが重要で。
恥ずかしくて身じろぎしてみるけれどギャリーの力の方が強い。ちょ、なんで、どうしてこんなこと…恥ずかしいよ、ギャリー!








「死なせてたまるもんですか…!」





唇を離すと、ギャリーは呆けている私を引っ張って絵の中へ飛び込んでいった。
私は息苦しいのも忘れ、目の前に広がる絵の風景に気を取られながら、ゆっくりと意識を手放していった。












さよなら、ゲルテナ



(あなたの感触が、離れない)














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さりげにギャリーの過去捏造。


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