お久しぶりですスイですやっほー!
意識を失っている間結構色々なことがあったみたいで、さっきギャリーに簡単に説明してもらったよ、いや大分寝てたんだねー…というか色んな事があったのに起きなかった私も私だよね。

でも、なんか夢を見ていたような気がするの。
すごく…懐かしいような…でも、知らない夢…


「スイ!ぼーっとしないの!置いて行くわよ!」


ギャリーに手を引かれ、私は急いでさっきイヴちゃんとメアリーちゃんが走って行ったという場所に向かって走る。…なんか…ちょっと千切られたのかな、少し息苦しい。…でも二人の方が、あのイヴちゃんが勝手に離れるなんて絶対おかしい。メアリーちゃんだってもっと沢山話しあわないといけないし!早くしないといけない、早くしないと、何か失う気がする!


「イヴちゃん、メアリーちゃん!!」


二人の姿を確認してすぐに私は叫ぶ。ギャリーは私の声量にびっくりしたみたいだけど気にしない。
二人は私に気付くとすごく驚いた顔をした、けれど何より私が驚いた。イヴちゃんが床に倒れながら笑い、メアリーちゃんはイヴちゃんの薔薇を持っている状況だった。嫌な予感、的中ですかい…!私はそんなことを思いながら唾を飲み込む。

一方ギャリーはその光景を見た瞬間、メアリーちゃんのところへと走った。




「…メアリーっ、あんた!」


「ギャリー!」



私はギャリーを全身で後ろから抱きついて止める。ギャリーはそのまま身体を硬直させ私の方に目線を向けた。だめだよ、そんなことしたらメアリーちゃんは怖がるに決まっているよ、ギャリー。
ギャリーは私の思いが伝わったのか、少しずつゆっくり私の肩を掴み身体を引き離した。………ん?…あっ!な、なんか勢いとはいえ抱きついてしまった…!
私も一気にギャリーと距離を取るとおずおずと目線をそらす。うわああどうしようううう私のアホぉおお!!


「…ご、め…ん…」


「いえ………」


なんかお互いに赤くなってどもる。あれ、私悪くないよね、っていうかなにこの恥ずかしさ。ギャリーもなんだか凄く赤くなって目線を逸らしている。やめてよそういう反応!
だけどそのうち、私達二人をずっと見ていたメアリーちゃんが我に返ったように叫び出した。


「スイ、目を覚ましたんだ…この、うそつきがっ!…私を、私を弄んでっ…!!」


メアリーはもう大きな声を出しきったのか声がほぼ潰れかけている。かすれ声なのがまたとても痛々しく響く。ああ、…そういえば、そうだったね。私は、『ゲルテナ』だった。だけど、



「メアリーちゃん、私はワイズ・ゲルテナじゃないよ。」


かつん、と暗い部屋の中で響き渡る。そういえば、ここは部屋なのかな。…なんだか酷く寂しくて重くて…まるで彼女の心の中みたいな場所のような気がするよ、メアリーちゃん。


「私は、私の名前は、スイっていうの。」



私は別に美術に興味があるわけでもないし、絵が上手いわけでもない。
怖いのだって苦手だし、手だって器用じゃない。



ごく普通のただの、女の子。




「メアリーちゃん、私が言ったこと覚えている?」

「…?」




だけど、これだけは譲れない。誰がなんといおうと、誰が止めたって否定したって絶対に譲れない、ただ一つの約束があるの。




「頑張って一緒に、脱出しようね?」




私はふにゃり、と情けなく笑うと、床に落ちていた自分のピンクの薔薇を一気に引きちぎった。





「「スイ!??」」



「なん、で…」



ギャリーとイヴちゃんが叫び、二人とも私に駆け寄ろうとする。メアリーちゃんは掠れた声でポツリと呟きながら私を見ていた。
そう、これで、皆で一緒に出られるんだわ。



なんで私は「スイ」なのに薔薇には80という「ゲルテナ」が生きていた数になっていたのか?
そんなの、ちょっと考えればすぐに思いついた。




この薔薇は、「ゲルテナ」の命なんだわ、と。





私はゲルテナの生まれ変わりだけど、「ゲルテナ」ではない。貴方と私は一緒だけど、一緒ではない。
だから多分痛みや記憶は一緒なんだろうけれど、気持ちと命は一緒ではない。
だってほら、現にピンクの薔薇を千切っても凄く痛いけれど、私は生きている。



きっと、貴方は、





「さようなら、ワイズ・ゲルテナ。」





私の手に持っていたピンクの薔薇は、脆く崩れていった。








さよう





(貴方は、私に助けを求めてたのかもしれない。)



(自分が残した作品達の、暴走を)















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さっきからメアリーが叫んでばっかりです、ごめんね!


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