※メアリー視点




寂しかった。
友達が、欲しかったの。
家族が、欲しかったの。

外にいきたかったの。


お父様のアルバムや写真にはこの美術館にはないものばっかりで凄く素敵だった。絵だってお父様が孫と行ったジャグリング、ギャリーが「梅か桜じゃない?」と言っていたピンクのひらひらした絵だって、ここにはないわ。

それに、本でみた『雪』。


きれいだね、かわいいねっていうとみんな悲しそうな顔するの。どうしてかな、だって雪なんてここにはないんだよ?冷たくて、小さくて綺麗なんだって。

わたし、お父様が見ていたもの、感じていたもの全て体験してみたい。

だって私はもうただの『絵』じゃないんだもん。







だけどうまくはいかなかった。



『この化け物共!!私をどうする気なの!!』
『帰りたいよう』
『だましたな…!』


『ただの絵のくせに!』



みんなそうやってわたしを突き飛ばした。友達にもなれないし外にも出れない。居場所だってない。なんで?わたし、なにもしてないよ?



私の隣で、青くて小さな悪魔の人形は紡ぐ。

『ニンゲンなんて、そんなもの』
『ダカラいっしょにいようよ、メアリー』





わたしは全てを諦めた、その時だったの。
赤い少女が家族とここにきていたのをみた。
直感でこの子だと決めつけ、コノバショへの道を開けた。



ただ問題だったのは、スイの存在だった。



私も最初わからなかった。だけどあの人を見た周りの子達はざわめいてしまった。だから道を開けてしまった。
最初はただの生贄でいいやと思っていたけれど、


あの人がピンクの薔薇を手にした時私は知ってしまった。



あの人は、ワイズお父様の生まれ変わりなのだと




ワイズお父様はピンクの薔薇が何よりも好きだった。それはお父様の奥さまにとても似合う花だったからだ。だから私も好きだった。皆も好きだった。

だから皆、誰が来てもピンクの薔薇にはしなかった。

それにスイの薔薇の枚数が異常に多いのも決定打だった。薔薇の数だけは私達が決めることではなかった。その人の精神や年齢で変わるんだけどスイのは80枚。
きっとワイズお父様に関係しているのだと確信した。

なら今度は家族とではなくてわたしと、




「イヴちゃん、逃げて!」


覚えていなかった。
無個性も、幾何学模様の魚も、自分で作ったのにあの人は覚えていなかった。
それだけの感情なの?私達に魂をこめておいて無責任すぎるでしょう?
なによ、なによなによなによ何よ!!!!なら私のこともそんな扱いだったの?所詮はただの『作品』だったってわけ!?
お父様のばか!!お父様なんて、



心壊になっちゃえばいいんだわ!!!!!



わたしはお父様じゃなくてイヴと出る。スイなんかここで遊んでればいい。
あ、そうだわ!スイが一人じゃ寂しがらないように別の人呼べばいいのよ、ねぇ青い人形さんどいつがいい?あ、この男?わかったわ。





そうして、準備は整えたのに。





「一人にさせてごめんね、メアリー…」




な、によいまさら…!
抱きしめられたスイの匂いは柔らかくて暖かい匂いだった。お父様みたいなぬくもりがした。うそ、思い出したなんて適当なこといって逃げようとしているんだわ!!


そう、そうよ今までだってニンゲンは私を嘘でだましてきたんだよ!
友達だって、ずっと一緒だって言ったのに!!


私は力を入れるとスイを突き飛ばしてパレットナイフを突きだした。
その拍子にスイが本棚にぶつかり、落ちていた本が頭に当たってそのまま倒れてしまった。あーあ気絶かなぁ。じゃあ今のうちにスイの薔薇を…


「やめて、メアリー!」


イヴが近くで泣き叫ぶ。ごめんねイヴ、もうすぐ終わらせてここの記憶なくして一緒に過ごそうね?ずっとずうっと。
だけどもうすぐで先端が花の中心部に刺さる、というところで私は手に力が入らなくなりカラン、と落としてしまう。

手を、何かに掴まれているからだった。





「…メアリー、あんた何しようとしているの」



その手の正体はギャリーだった。なによ、ただの玩具なくせにでしゃばらないで!!
だけどその手は力が強くなかなか外れない。私はむかついてギャリーの腕に噛みついた。私の歯にギャリーはひるみ、再びパレットナイフを掴んで今度はギャリーの薔薇にむかって刺そうとする。


どうして、どうしてみんな私の思い通りにならないの!!!

わたしはただ、ただ、





『メアリー、』




誰かが私を呼ぶ声が聞こえた。上を見上げると

大きな青い人形が本棚から顔と手を出していた。





『ネェメアリー』


『アソンデヨ』



『一緒ニ イヨウヨ』






赤い舌が見え隠れしながら私に訴えかける。私は無視しようとしたが身体を人形の手によって取られ身動きできなくなる。ついでに反対の手でイヴとギャリーを掴んでいた。そして口をいつもより大きく開けると


『イツモノ おもちゃばこ に イコウ』




倒れているスイを置いて、わたしとギャリーとイヴを自分の口の中へと放りこんだ。














(お父様なんか、スイなんか、だいっきらい。)













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薔薇うんぬんは個人的な考察です。ピンクのひらひらした絵は「月夜に散る儚き想い」です。


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