こんにちは。スイです。いやぁなんかシリアスな雰囲気になってきましたが、まとめて言わせていただきますと…
とりあえずメアリーちゃん可愛いいいい!!さっきは変な感じがしたけどきっと気のせいだよね!こんな可愛い子私みたら忘れないもん!ちょっと抱きしめたいんだけどいいかな!
ぼーっとメアリーちゃんを見つめながら進んでいくと、ふと目にとまった水のある花瓶を発見した。
まぁイヴちゃんの薔薇が少し元気ないから、ということで花瓶に花を生けた。するとメアリーちゃんがイヴちゃんの薔薇を見てぱぁっと表情を明るくする。
「わーイヴの薔薇は赤なんだね!私の薔薇は黄色だよー!」
ほら!といって黄色の薔薇を出す。可愛いな!何度も言う、可 愛 い な!ギャリーもどこか微笑ましそうに「あら本当ね、大切に持つのよ」と言っている。イヴちゃんも「綺麗だね、」と言うとそれを聞いたメアリーちゃんはそのまま嬉しそうに
「私、赤も好きだけどピンクも好きなんだ、あと青も!」
きゃっきゃとはしゃいでいるメアリーちゃん。薔薇好きなのかな、私はそっとメアリーちゃんに自分の薔薇を見せた。
「私の薔薇はピンクだよ!」
「わぁっきれー!!可愛いねー!!ねぇねぇ、ギャリーの薔薇は?」
「青だけど…」
「みせてー!みせてー!!」
メアリーちゃんはギャリーに迫り、そしてしぶしぶメアリーに薔薇を見せる。メアリーはキラキラした目でギャリーの薔薇を見つめている。その表情は本当に輝いていて凄い可愛い。思わず可愛くて私はつい、メアリーちゃんの頭を撫でてしまった。
「えっ?」
「あ、ごめんね!その…メアリーちゃん本当に可愛いなぁって、」
私はすぐに「嫌だったよね」と言って手をひっこめる。メアリーちゃんはちょっと照れながら「いやじゃ…ないもん」とぷいっと顔を逸らす。やっべ何この子可愛いんだけど、ツンデレなの!?どうしよう可愛いんだけど!
メアリーちゃんの可愛さにすでにメロメロになりながら、すとんとしゃがんでメアリーちゃんと目線を合わせる。
「メアリーちゃん、一緒に頑張ってここから出ようね!」
にこり、と笑いかける。メアリーちゃんは少し動揺したそぶりをしてからごまかすように「うん!」と笑顔で返事してくれた。
イヴちゃんが「私も!」と言って袖をひっぱっていて、その可愛さにまた癒されている私は気付かなかった。
メアリーちゃんが、酷く辛そうな顔をしていることに。
そしてそんなメアリーちゃんを、ギャリーは見ていたことに。
次に進んで入った部屋は、思わず吐き気を覚えるほど気味が悪い部屋だった。赤い目の青い人形が何個もそろって置いてあり、真ん中の大きな青い人形の絵は、まるで生きているような、私たちを凝視しているような恐ろしさがあった。
そしてギャリーも冷や汗をかきながらこの部屋に圧倒されていた。ただ、イヴちゃんとメアリーだけは表情一つ変わらず、ましてや「可愛いねー」って言って人形の頭を撫でている。
「…あの子たち、こんな趣味なのかしら…」
「ギャリー、ちょっとこの本見て」
『心壊』。そう書いてある本を見て驚愕する。つまり、精神が崩壊する恐れがあるってことだよね?どんだけキツイ部屋なのここ。
っていうかもうこれ芸術とか関係なくなっているよね、精神崩壊ってどんな芸術だよ!
とりあえずどういうことなのか、もっといい情報はないのか本棚を探していると、背後に何か音がして、ギャリーと一緒に後ろを向くと、メアリーちゃんとイヴちゃんが青い人形のお腹から何か出している光景だった。
人形の赤い目が、こちらをぎょろりと向いたような気がした。
「ギャリー!スイ!鍵発見したよ!」
青い人形はお腹から綿を出してくたっとしている。なんだか可哀想で、笑顔で鍵をちらつかせているメアリーちゃんが恐ろしくて。
どうやら二人には何か違うものに見えているらしい。二人の会話が少し変だ。…なんだろ、ここ。
ともかく鍵はゲットしたし、あんまり情報もないみたいだからこの部屋から出る。最後に何か音がしたような気がするけれど気にしないでドアを閉め、違う部屋に進もうとした瞬間。
ずるずると音がして、あたりを見渡す。目の前に『嫉妬深き花』という題名の絵があり、その絵が少しずつ動き始めている。なにこれ!?
反対側には緑の太い蔦が廊下から突き出てきた。え、どういうこと!?
「なにか来るわ…!」
「イヴちゃん、危ない!」
蔦が私たちに襲いかかってくる。
即座にギャリーはかわして左側に、イヴちゃんはメアリーにひっぱられて右側に。私と言えば蔦に足を絡め取られ、そのまま身体に縛るように巻きつかれてしまった。
「スイ!!!!」
「っ!」
ところどころにあるとげがチクリと肌にささり、薔薇がちぎられる感覚を感じる。くそ、こんなに巻きつかれたら身動きできない…!イヴちゃんは蔦を広げようと力をいれるが、どうやら石で出ているらしく、動かない。道理で硬いんだな感触が!
ギャリーは悔しそうに石の蔦を睨み、そして大声で私に呼び掛ける。
「スイ、怪我はない!?」
「大丈夫だけど…三人とも怪我は?」
三人とも大丈夫、と答える。私はほっと安心するがギャリーは「スイは大丈夫じゃないでしょ!?」と半分焦りながら答える。イヴちゃんもどうしようか考えているみたいでさっきから蔦にぺしぺしと攻撃をしている。
うん、なんか勇敢ですイヴちゃん。でも巻き込みたくないのでやんわりとイヴちゃんを止めた。
すると今まで黙っていたメアリーちゃんがゆっくりと口をひらくと
「ねぇ、さっき鍵拾ったんだから…あそこの部屋、行けるよね?あそこの部屋に何かあるかもよ?」
このままだとどうすることも出来ないから、というメアリーちゃんの考え。頭いいなこの子!私全然考えつかなかった!
イヴちゃんもその意見に従って、二人で奥の部屋に向かう。ギャリーが不安そうに見ていたけどイヴちゃんが「大丈夫。」と言うものだから何も言えなくなる。
あの子…いつの間にあんな逞しく…!お姉さん複雑!
そして最後にメアリーちゃんが振り向くと
「ギャリーとスイはここにいてよ。すぐ戻ってくるから」
と言って後ろをむいてそのまま角を曲がっていった。曲がる瞬間、彼女が何か笑ったような気がした。
その後暫く二人でイヴちゃんとメアリーが帰ってくるのを待っていた。
だけどどれくらい待ったのだろうか、二人は帰ってこない。心配になってきて、私も蔦の拘束の中からバタバタと手足を動かし始める。くっ動けないな…
「危ないわスイ、大人しくしないと…!」
「でも、二人が、」
イヴちゃん、メアリーちゃん!!
そう叫ぶが返事はない。ギャリーはぎゅっと青い薔薇を掴み、私に声をかける。
「スイ、アタシ調べてみるわ。」
「えっ」
「あの部屋…謎がある分まだ何かあるかもしれないし…大丈夫、何もなかったらすぐに戻るわ」
「でも、危ないよ!」
ギャリーが真剣な顔で私を見つめる。私は蔦の中で必死に暴れるが一切動かない。ギャリーは蔦の群れから無理矢理顔を覗きこませ、私に優しく笑いかける。
「大丈夫、絶対、生きて帰ってくるわ」
あぁ、なんて私は非力なんだろう。
ギャリーの後ろ姿をただ黙って見るだけ。蔦の中の身体は動けず、また見送るだけ。
どうして、ねぇどうして動けないの、
私は、なにも出来ないの?
一人俯き、唇を噛む。口の中に広がる血の味が酷く愛おしかった。自分はまだやれるような気がして、勇気づけられるような気がして。そしてその瞬間、石の蔦はしゅるしゅると腕に足に絡まっていた蔦がほどき、やがて鳥かごみたいな形になって私を閉じ込めた。
蔦による拘束は解けたがおかげで周りが見えない状態だ。
私は一生懸命蔦を殴るが、やっぱり硬い。
すると脳内に高くて綺麗な声が響き渡る。
『やっと二人っきりね』
「なっ、…!?」
あたりを見渡すと、毒々しいその紅い花が笑うかのように花弁を震わせる。蔦もざわざわしてなんだかせわしない。
私が花の存在に気付くと嬉しそうにひらひらと額縁の中で揺れる。
『やっと私をみてくれる、』
「な、なに」
しゅる、と額縁から細い、今度は本物の蔦で私の顔を撫でる。
冷たく柔らかいその感触に負けるもんかと睨むと、花は再び揺れ動く。
『ねぇ、あの三人だけじゃなくて、私のことも可愛がって?』
え?
いや…あの、すいません、あなたお世辞にも可愛くないし…ギャリーを可愛がったことないんですが…思わず呆気にとられていると、蔦が私の身体を絡め、花の方に引き寄せる。
花の香りでむせかえり、思わず目を閉じてしまった。
『嫌。私のことも構って、ねぇ、ねぇ。』
ア ソ ボ ウ ヨ
くらり、と花の香りに酔い、私の手からピンクの薔薇が離れる。どんどん重たくなる身体に、迫りよる蔦を感じながら私はゆっくりと瞼を閉じる。
あぁ…ギャリー、イヴちゃん、メアリーちゃん、
どうか、無事でいて。
嫉妬深き花(嫌な予感がするわね…スイ、大丈夫かしら…って、隠れ道?ここから向こう側にいけるかしら)
(メアリー、やっぱり戻らない?スイが…)
(大丈夫だよ、イヴ!)
(あの花が、いいようにしてくれるから)
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