「しんかいの、よ?」


「それよそれ!よし開けるわよ!」


イヴちゃんとギャリーと少し話した後、三人で部屋を出て次のドアを開けると、全体的に紫の色でぬられている廊下が現れた。その後進んで行くと何故かまたマネキンさんに追われたり、ミルクパズルについて話し、最後に扉の暗号を解いて部屋に入る。


その部屋の本棚が二手に分かれていたので私とギャリーが右側の本棚。イヴちゃんが左側の本棚を調べた。イヴちゃん一人で大丈夫?と聞くとイヴちゃんはしっかりとした口調で「うん…!」と答えてくれた(ちょっと心配だけど)ので、私たちは比較的量の多かった左側の本棚を調べる。

そしてふと取った本の内容に私は驚く。

「ここの女たちは 皆 花占いが すき」

思わずゾっとする。そういえばギャリーと一番最初に出会った時、青い女の人はギャリーの薔薇を持って何故か一枚一枚ちぎっていた。
もしもギャリーを本当に殺したいのなら、ひと思いにまとめてちぎるか、掌でおもいっきり握りつぶすかをするはずなのに。


ギャリーの方を見てお互いにうなづく。
この花は私たちの命そのもの。ここの絵の人達が私たちの薔薇を狙う理由は、花占い。

もしも、誤って渡したりなんかしたら…





「ねぇスイ、ギャリー、この本が読めないんだけど…」


イヴちゃんに声を掛けられてハッとして、何故か急いで読んでいた本を後ろに隠してイヴちゃんの方をみる。イヴちゃんは頭にハテナマークを浮かべながらも、「これお願い」と言って本を差し出してきた。ばっかやろう可愛いなおいいい!!
私はしゃがんで、イヴちゃんを手招きしてその本を開く。
ギャリーも「どうしたの?」と言いながら一緒にしゃがんでその本を覗きこむ。


「えー、っとなになに…『私はその艶めしく 美しい…』ってちょちょちょちょっとぉおおお!!??」


バタン!と一緒にギャリーと本を閉じる。
ギャリーと私はお互いを見ないようにそそくさと何故か距離を取った。
イヴはどうしたの?と首をかしげていたので、ギャリーは「大人になってから読みなさいね」とイヴを宥めている。私はそそくさと本棚に本を戻し、1つ咳払いをした。
ああもう、いやまぁ、に、人間の三大欲求っていうし、ね。裸婦の絵とかもあったし、ね。もうなんか見なかったことにしよう。
真っ赤に染まった顔はしばらく戻りそうもないけど…。


その後、気を取り直して「決別」という大きな不気味な絵を三人で見たあと、部屋を出ようとした瞬間、


「わっ、停電!?」

「イヴ、スイ、いる!?」

「いる!」

「いるよ…!」


お互いの安否を確認し、動かないように指示するギャリー。そしてギャリーが「あ、」と声をあげたと思いきや急に明るくなる。

「そういえばライターがあったのよね、これで明かりを…って、え」




皆の視界が明るくなった部屋は、なぜか一面クレヨンでかいたような怖い文字ばかり。「しにたくない」…どうして、此処に来ていきなり弱気なことを言うのかな。
イヴちゃんがぎゅっとしがみついてきたのでよしよしと頭を撫でる。
そのまま手をつないで部屋の外に出ると、


一面に書体の文字の、注意書き。

そこに「マッチ、ライターなどの持ち込みはご遠慮くださいますようお願い致します」と書いてある。


「ライター…」


ギャリーがライターを持っていた。そして『火気厳禁』。…絵だから、絵を燃やすと絵達が死ぬ、ということ…。だから、さっきライターを使った時あの部屋は必死に死にたくない、と


なら、この美術館全てを燃やしてしまえば、


一瞬よぎった怖い考えをふりきるよう頭を振る。
私何考えてるの!?絵を燃やすなんて…!作品に何かあったら、っていう注意書きもあったじゃんか、絶対、絶対、絶対そんなこと…!

イヴちゃんの震える手がこちらに伝わってくる。
やめて、やめて、落ち着いて私…!



「スイ、しっかりして!」


「っ、ギャリー、」



ぐいっと腕をひっぱられ、顔が近くなる。ギャリーはお構いなしといったように私の目をしっかりと見ている。ギャリーの深くて暗い青の瞳に、吸いこまれそうになる。
暫くするとあれだけ震えていた身体も、煩かった心臓の音も段々落ち着いてゆく。
乾いた口ではぁ、と息をはくと、今度は笑顔でギャリーを見る。


「ありがとう、ギャリー。もう大丈夫!」


「……、本当に?」


「うん!さっきはちょっと疲れてたみたい!」



苦虫を噛んだような苦い顔しているギャリーの腕を引っ張り、片方の手をイヴちゃんの手を取って笑顔でそのまま前に進む。その先にまるで道しるべのようについてある赤い足跡があったので、恐る恐るたどって扉を開けた瞬間、



「わ、」

「っ…!」


誰かといきなりぶつかってしまい、そしてそのまま転んでしまう。顔を上げると、金髪のブロンドの髪に、青くて綺麗な大きな瞳の美少女が転んでいた。

あれ、…?

ボーっとしながらその女の子をじっと見る。その目線に女の子はビクっと身体を強張らせると静かに後ずさる。ハッとしてとっさに「ごめんね!」と言って手を差し伸べるとその美少女は後ずさりながら私を不審な目でじぃいと見ている。

ギャリーが庇うように明るく女の子に「アナタも美術館にいた人ね!」と言う。その言葉を聞いた瞬間、女の子は目を輝かせてうん、と言い、自分で立ち上がる。
その後ギャリーはちょっと女の子を話して、一緒に行こうと言ったら女の子は小さく「うん、行く………!」と嬉しそうに笑う。
イヴちゃんも嬉しそうに自己紹介をして、手まで繋いで女の子と仲良くなっている。


だけど、私は、



「ねぇ、アナタは?」


「っ、え?」



「アナタの名前は?」






彼女の大きくて綺麗で深い青の瞳が私を射抜く。おかしいな、いつもの私だったらこんな美少女がいたら大喜びなのに。


どうしてか、デジャヴを感じる。



「私は、スイっていうの。」



「そっかぁ!私、メアリーっていうの!よろしくね?」




ぎゅっと手を握られ、思わず身体が強張る。メアリーはとっても楽しそうにうふふと笑いながら小さな声で






「…みぃつけた。」





kugutu



(かくれんぼはもうおしまい。)

(じゃあ、次は)



(花占いして、遊ばない?)













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kugutuはメアリーのBGMです。
メアリー出てきたので大分ダークになっていく…頑張って明るくしたいです


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