「イヴ!」
「イヴちゃん!」
あの沢山のゲルテナ作品から逃げて、不気味な絵が貼られている廊下で一回足を休める。
私はイヴちゃんを背中から降ろし「大丈夫?」と声をかけると、イヴちゃんは答えずそのままフラっと床に倒れてしまった。
急いでイヴちゃんをかかえ、まっすぐ進んだ所の部屋に飛び込む。ギャリーはまず危険がないかキョロキョロを回りを見て、私はイヴちゃんの薔薇を花瓶に生ける。
でも薔薇が全回復してもイヴちゃんは目を覚まさない。私はそっとイヴちゃんの頭を膝に乗せて寝かせた。
「この部屋に危険はないようだけど…イヴ、大丈夫かしら」
「…、イヴちゃん…」
ごめんね。イヴちゃん。私が守ってあげられなくて、いつも情けなくて。
ふるふると目を震わせ、涙が出そうになる。イヴちゃんは汗びっしょりで顔色は悪い。その様子を見たギャリーはぎょっとしていたが、暫くすると私の隣にしゃがみ、
「大丈夫よ。」
「ぎゃ、りー」
「大丈夫。」
ぐしゃっと頭を撫でられ、ギャリーが優しく笑う。私も今までの悲しい気持ちがギャリーを見た瞬間、なぜだか消えてしまった。なんでギャリーって、こんなにも安心するんだろう?
私が理由も解らず首をひねっていると、ギャリーがいきなりコートを脱ぎ始めた。
「ま、スイも疲れたでしょうし、ゆっくり休んでて?」
「この本棚はアタシが調べるわ。」と言ってギャリーはそのままそのコートをイヴちゃんの体にかける。そして本棚に回って本を読み始めた。なんていうか、
「オネェのくせに…」
「?なんか言ったかしら?」
「なんでもないっ!」
あーもう、なんで私が照れるんだろう!
イヴちゃんの上にかかってるコートの裾がやけにこそばゆくて、妙に緊張して仕方なかった。
「ん…っ」
「あ、イヴちゃん!」
そのうちイヴちゃんが起き上がる。少し顔が青い。ギャリーもこっちに来て様子をうかがっているみたい。私がイヴちゃんに「どうしたの?大丈夫?」と言ったらイヴちゃんは「大丈夫」と答えた。
大丈夫な顔色してないよイヴちゃん…
そうするとギャリーはイヴちゃんにポケットを探らせ、キャンディをあげた。イヴちゃんは嬉しそうに大切にポケットにしまった。
なんだか、
変な、気分になる。
って私は何を思ってるの!イヴちゃんが元気になってくれて嬉しいはずでしょ!イヴちゃんの笑顔マジ天使!
ぶんぶんと頭を振っているとギャリーとイヴちゃんがこちらを見ている。
はっ私もしや変な子…!?
「?どうしたの?スイ、さっきから変よ?」
「具合…悪い?」
ぎゅっとイヴちゃんが手を握ってくる。マジ可愛いよあああ!
二人に大丈夫!と笑顔で告げるとスッと私は立ち上がった。が。
「うぉっ」
「!スイ!?」
いきなり立ち上がったせいで急な立ちくらみ。ついでにいえば今までイヴちゃんのことを膝枕していたので足がしびれて上手く力が入らない。
ふらっとそのまま床に倒れそうになると、ギャリーが慌てて私のことを抱きとめた。
「スイ、大丈夫!?」
「は、はははははい!!」
「やっぱり休んだ方が…」
「だ、だいじょうぶです…」
ギャリーとの距離が近いよううう!
抱きとめているのでギャリーとの顔の距離は約5センチ。そしてスラっとしているけれど、やっぱりちょっと筋肉がある男性の腕に、今まさに私が抱かれている状況。
ついでに言えば私もギャリーもちょっと薄手なのでお互いの体温が伝わる。
かぁっと顔が赤くなるのが止まらず、おずおずとギャリーから離れると、ギャリーも何故か顔を赤くしながら後ろを向く。
私はそのままぺたんと床に座り込むと、イヴちゃんが
「ふたりは、恋人なの?」
どうしてそうなった!(だって、抱き合ってたよ?)
(ふ、不可抗力よ!)
(そうだよイヴちゃん!)
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今回は短めに。
本当はギャリーを膝枕とか、ギャリーと一緒に本を読むとか考えてたんですが書くスペースがなかった…短編で書こうかな。