蹴って逃げて捕まって


[なんか女子にゲシゲシと、]
[蹴られている人もいるらしい。]

とある日のこと。

創作部に入部した私は、スケッチブックに筆記用具、読書用の本をもって校内を歩いていた。ら、

「ちょっ、やめろって!」

なんか声が聞こえる。声の主は男子生徒。何してるんだろうと気になり、声のするほうへ行くと1-Aに着いた。

そして、教室に足を踏み入れてからぎょっとした。男子ーーー小泉智己が、創作部のメンバー佐中泉にゲシゲシと蹴られているではないか。

「……泉、何してるの」

思わず声を掛けると、泉は動きを停止してみっちゃん!と言いながらニコニコしている。可愛いなあ。

一方小泉は、救われたとでもいうように安堵の溜め息を漏らす。そして、

「佐中、お前がけると痣ができる」

やめろよ、と言いながら言うもんだからこっちは苦笑い。確かに、泉の蹴りは手加減というまのがない為、痛い。泉の辞書には手加減という言葉がないのだろうか。

「だって小泉、ちょっかい出すじゃん!」

と、泉は反論する。そりゃ、小泉が悪いけど。泉は手加減しなよ。

「…そりゃ俺が悪かったけど、蹴るの手加減しろよ……」

全く同意である。

そこでふとある考えがよぎる。…小泉って、泉のことが好きなんじゃないだろうか。じゃないと、ちょっかい出してわざわざ蹴られるような真似はしない。

そうかそうか、泉が好きなのか。

うんうん、と1人無表情で解釈する私を、2人は見ていた。

[好きな子には、]
[意地悪したいって]
[言うもんね。]


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テーマ「人外ファンタジー」
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