皆良い子だと言う。 教師は言った。 「おまえ等ほど良い学年はない。」 「この中に、悪い奴はいないから。おまえ等は良い学年だから」 他校は言った。 「凄く良い学年ですね、羨ましいですよ」 親達は言った。 「橘くん、凄いわね。テニスで優勝したんでしょう?」 周囲は言った。 彼等は最高だ。とても良い学年だと。 けれど、本当にそうなの?彼等の関係は、心境は、どうだった? 解っているつもりでも、本当は何も解っていないのだと。周囲は知らない。 ドロドロしてるし、争いも喧嘩もいじめも、トラブルも、いっぱいある。 彼等は強くない、決して。ただ、良い子にして、耐えてた。でも、いつまでも耐えられるほど、強くない子もいるんだと。皆、心は脆くて、いつ壊れてもおかしくない。 これは、そんな彼等の、ある少女の周りの話。 「嗚呼、結城も……弱かったんだね」 闇の中、1つ零された言葉の欠片。 しおり |