[要らないことが、] [存在を否定する。] 要らないなんて言われた訳じゃないんだ。だけど、要らないって思われてるように感じることなら、何度もされているから。 ほら、今日も。 「お前は俺の子じゃない。こんなに出来ない奴…、出ていけ、今すぐ」 「…っ」 言われてる気がするんだ、遠回しに。 嘘つき、劣等生、死ね、大嫌いだとか、罵倒とか暴言なら何度も浴びてる。暴力だって振るわれてる。ビンで殴られたり、叩かれたり蹴られたり、包丁で殺されそうになったり、首絞められたり。 ずっと耐えてきた。最初は痛くて辛くて悲しいけれど、何度か言われたら感覚が麻痺してなくなっていくように、慣れたように、何も感じなくなった。 平気なんだ。だけど、痛いのは。自分が憎くて憎くて殺したくて死んでほしくて嫌いで嫌で嫌で赦せなくて。自己嫌悪が積もる。思考がネガティブになる。自分が大嫌いになるから。だから、痛くて辛くて悲しくなった。 お父さんは、私に人形になってほしかった。何でもできるような、万能な人形に。だけど私はなれなかったんだ。 「出来損ないがっ」 頭に衝撃な走った。ガン、と一気にきて一気に体を蝕む。ジリジリとする気がした。 頭の回転が遅いのは何故だろう。頭が熱くて痛いよ。なんでかな。 「とうさ、」 視界に入った男は、手に持つものを振り上げた。ああ、殴られたんだ。そう気づく。 「はっ、」 どこか冷静で平気な顔をしているのは性格故か。いつもみたいに振る舞える自分が面白い。そして、 ―――自分が大嫌い過ぎて、苦しい。 誰かが心臓を鷲掴みして息の根を止めるような、苦しさが、私を、襲って、逃げられ、ない。 瞼を閉じたから、視界が暗転する。体が傾いてドサリ、倒れた。体の感覚も消えていくよう。でも、大丈夫。手や頭や顔を生暖かい何かが滴る。 ゜「(血…)」 ぬめる手。顔を血だらけに染め上げる。私は、今赤に染まる。だけど、まだ死なないよ。 パキン、何かが壊れる音がいつもする。今日は、一段と、酷かった。 [私は、要りますか] [それとも要りませんか] [どちらにせよ、どうでもいい] しおり |