嗚咽を漏らして泣いた夜(短編) | ナノ
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「ほら、はやく」

嗚呼、なんでこんなことになってるんだろう。

絶対、負けないと思ったのに。勝つと思ってたのに。
計算は狂わないし、きっと大丈夫だと思ってた、けど。

この人の笑いに、仕草に、言葉に。いつの間にか、全てに惹かれていた。


あたしの態度から察してか、突然、「俺のこと、好きでょ?」なんて。悔しすぎる。なんなんだ、コイツと思ってしまう。頬が熱い。

でも、否定できないし、彼を好いてる自分がいて、そんな自分が腹立たしい。
恋愛に関してはこれといった知識もない私だけど。でも、なんとなく、人を好きになることが分かった気がする。

だから、言ってやるんだ。

計算が失敗した腹いせと、お返しと、最終手段を兼ねて言う。

絶対コイツはあたしを好きだという確信と、情報網を通して知った真実からの導きで。


「あたしのこと、好き?」

一瞬フリーズして、目を見張る君に、ネクタイを引っ張って引き寄せて、

大胆かつ羞恥の煽るこの行為から織りなせる体制で。

だったらね、と耳元で囁いて。

「キスして」

甘く落とす言葉。

きっと、落ちる。だって、あたしの今の計算上では成功するから。

フッと微笑んで、近づいてくる彼の顔。

きっと、5秒後に、あたしと彼は落ちている。


5、

4、

3、

2………、



だって、

(絶対落とすと、)
(決めたんだから)


END

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