言わないでほしい意味を込めた言葉が、心臓を鷲掴みにして離してくれない。それに加えて、刃が抉りまわすように痛い。その言葉が、バリンと何かを叩いて砕いて、破壊する。 嗚呼、もう、真紘は―――――…… もう、生きれない。 「だから―――」 遮って貪るようにキスをした。噛みついて、吸って、離さない。唇をこじ開けて舌を差し込んで、口内を犯した。 「…っん」 何度も何度も何度も啄ばむ。 そうしてやっと離したとき、息絶え絶えに真紘は、 「は、るか…っ、ごめっ…ケホッ…っぁ…ありっが、…とっ」 「…っ」 ―――別れって、こんなに辛かったっけ? 「―――…っ、さよ、な…っら」 優しく儚げに微笑む真紘に、もう一度キスをした。優しく、労わるように、甘く甘く。 「まひ―――」 ピ――――――― 死を意味する最後の音が、木霊した。 ……午後10時27分17秒を持って神埼真紘18歳死亡。 *** 何をしたんだろう。何も覚えていない。 「悠、もう一週間も経つわ、今度は貴方が―――」 「…」 死んだような、虚ろな目は恐ろしく冷たい。 「真紘……」 母が言う。 「広田先生は最善の手を尽くしたそうよ。…真紘の手術が成功する確率はほとんどなかったそうよ。きっと成功しても、もって4.5時間だろうって」 真紘は、ずっと一緒にいるって言ってたのに。 「嘘つき」 「…だから、2日以上も持ったのは奇跡なの。悠、もう真紘はいないけれど…、真紘が生きたかった人生を、悠が生きて。生きて、真紘を笑顔にさせてあげて」 母のせいいっぱいの励まし。 わかってるんだ。だけど、まだ追いつかない。追いつけない。 そんな自分に苛々したのか、立ち聞きしていた和葉がズカズカ部屋に入ってきて、盛大に殴り、怒鳴った。 「いつまでもウジウジしてんじゃねーよっ!!」 真紘が悲しむだろ―――、その言葉に目が覚めた。モヤが晴れていく。 ―――もう、真紘は還らないんだ。 ずっと、君のことだけを愛しています。 真紘、ごめん、ありがとう……さようなら。 Fin →あとがき、おまけ mokuji ≠ しおりを挟む |