嗚咽を漏らして泣いた夜(短編) | ナノ
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悠斗side

真知から連絡があった、【今から美貴と、4人の想いでの場所で会う】と。
悠斗も、翔に連絡して来て、と綴られていた。

翔に連絡して、兄貴のバイクを借りてとばしていった。美貴、好きなんだ。今日伝えようと、気持ちを整えて、言うつもりだった。

けれど、到着したとき、美貴が泣き崩れていた。傍らに槇 由梨乃先輩が海を見て立ちすくむ。

なんなんだ―――?

美貴の儚さに、思わず、勢いよく抱きしめた。

「美貴、落ち付いて」

そう声をかけて、海を見ると、―――真知が海に沈む一秒前。時が、止まったように思えた。


悠斗side


―――ザブンッ!

背中から打った。痛い。尋常じゃない痛みに背中がビリビリと痛む。

私の身体はどんどん沈む。最後に悠斗と美貴が見れた。…翔、今どうしてるかな?笑ってるかなぁ?最後に、弟の笑顔がみたかった。もう、叶わないけれど。

だんだん息苦しくなる。本能で海面へと出たくなる。でも、身体が痛い、重い、苦しい。生理的に涙が出そうだ。
最後に一度だけ世界を見てみたくて、少し瞼を開いてみる。

嗚呼、もうとてもじゃないけれど、あたしにはこの距離を埋めることはできないよ。

きらきらと光る水面は水中からみても綺麗。自然が織りなす景色に、死に際だというのに感動しそうだ。ほんと呑気すぎる、馬鹿だ。

どんどん光が遠のくのと同時に、身体がふわふわして、意識が遠のく。

もう、無理かも―――。

ぐいぐいと意識を何かに引っ張られる。


―――…、さようなら。


必死で、ものすごく泣きそうな翔が見えたのは、きっと神様が見せてくれる幻想だね。最後に、あたしへのプレゼント。

あたしの意識は、其処で途切れた。

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