嗚咽を漏らして泣いた夜(短編) | ナノ
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あたしも、美貴も、悠斗も、みーんなみんな――――馬鹿だなぁ。

何を躊躇っているんだろう、不安なんだろう、恥ずかしがっているのだろう。
そんなもの、保持しても無意味なのにね。

だから、言ってあげなくちゃ。

悠斗は、美貴が好きだよって。
あたしが死ぬのは、美貴のせいじゃないんだよって。

別に死ぬのなんて恐くない。嗚呼、でも心残りはある。―――、美貴と悠斗の笑顔が見れない。弟の、翔の笑顔が、仕草が見れないなぁ……。

脳裏を記憶が巡り巡って回っていた。あたしが生きた、17年間の記憶の欠片がふわりふわり。

いまだビュウビュウと風の音が聞こえる中で、微かに波の音がする。ザザン、ザザンと。だんだん大きくなる其れに、海が近い。もうすぐあたしは落ちて死ぬんだな、と確信めいた何かを持った。

「美貴っ!!」

あたしは大声で叫ぶ。

「悠斗は、あんたのこと好きなんだよ!!信じてあげて!!」

声を張り上げても、聞こえないかもしれない。

「それと!あたしが死ぬのは、美貴のせいじゃないから!!」

だけど、聞こえるといいな、聞こえてほしいという微かな望みに乗せて。

優しく笑って一言。

「美貴、大好き。ありがとう―――、さようなら…」

ちゃんと笑えたかな、あたし無愛想だから。いつも無表情でこわいってよく言われてたあたし、ちゃんと笑えてる?

ぐんぐん遠くなる美貴が、儚い。今にも散りそう。悠斗、早く来て、美貴を支えて。

あたしが、海に沈しずむ準備で目を瞑る一秒前、確かに美貴を支える悠斗が見えた。叫んでる?でも聞こえないんだ、ごめんね、ばいばい皆。

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