嗚咽を漏らして泣いた夜(短編) | ナノ
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なんでこんなになってるんだ、とやけに冷静な自分がいる。
冷静でいちゃいけないのに、全く呑気だなと思う。

そういえば、泣きそうな、でも憎々しそうな顔の美貴があたしを見てた。その後ろで、槇先輩がニヤニヤとあたしを嘲笑していた。

そうか、落とされたのか―――、そう判断するのは遅くなかった。

なんでだろう、あたしは美貴に何かをした?酷いことをした?傷つくことをしたのだろうか?

落下していく身体は、空気抵抗をしていて、風が耳元でビュウビュウ吹いて煩い。落下していくときに見える視界にはいつもと違う、逆さの世界。自分だけ、何処か別の世界にでもトリップした感じ。

美貴が落ちるあたしを見る。口元に手を当てて、今にも泣き出しそう。何やってるんだか、美貴があたしを落としたのにね。

手を上に挙げれば、美貴は「真知っ」と叫ぶ。

違う、あたしは助け何て望んでない。そんなことの為じゃない。別に、あたしは死にたくない訳じゃないから。

「サヨウナラ」と呟いて、ひらひら手を振る。

―――、なんとなく、美貴が突き落とした理由がわかった。槇先輩に何かしら言われたんだろう。きっと、……悠斗のことだ。

…、あたし、美貴を応援してただけなんだけどなぁ。失敗しちゃった。きっと、美貴は勘違いしたんだね。

くすくす、笑いが漏れる。自嘲した。

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