「スクアーロ助けてぇえええ!!」

「ゔお゙ぉい!うるせえぞぉ!」

「スクアーロには言われたくない!」

「ああ゙?」

半泣きでやって来た此奴にオレは仕方なく書きかけの報告書から顔を上げた。
ヴァリアーでもないただのフリーの殺し屋である此奴が何で此処に来れるのかと言えば、オレと此奴が同期で同時に腐れ縁でもあるからの一言に尽きる。
不本意ではあるが、付き合いは長い。
此奴が此処に居続ける限り、オレは報告書を書き上げることは出来ないだろう。
溜息を吐いて、仕方なく相手をしてやることにした。
大体検討はついている。
どうせ、アイツのことだ。

「で、今日は何されたんだぁ」

「仕事が終わって帰宅したら部屋にベルが居た」

「……」

「何処に行ってたのか問い詰められて頭に来たから「彼氏でもないのに色々詮索するのやめて!不法侵入者!」って言ったら殺されかけた」

「………」

「で、今死ぬ気で逃走中」

ぐず、と鼻をすするその顔をよく見れば、頬には二、三本の──例えるならワイヤーか何かで切ったような──傷があった。
服の所々もそんな感じで、オレは久しぶりに此奴を本気で可哀そうだと思った。

「部屋も目茶目茶だし、なんかもうほんと嫌だ…」

「お前…ほんと可哀そうだなぁ」

「同情してくれるなら今すぐヤツの首を刎ねてよ!殴られて口切れるし…私いつか絶対殺される」

「ベルもまだまだ餓鬼だな」

「何が?」

「あいつが捻くれてんのは知ってんだろぉ。察してやれぇ」

「意味わかんない!」

「決めた!引っ越す!」と涙目で叫んだこの女は、ベルの少しだけ(でもねえか)歪んだ愛情に、当然ではあるが気づかない。

「スクアーロ!絶対、絶対にベルには引っ越し先を教えないでね!」

「無駄だと思うがなぁ」

無理やり指切りをさせられて(お互いもうそんな年齢でもねえのに)引っ越しの準備に取り掛かる為、脱兎の如く部屋から出て行くその後ろ姿を見送り、オレは漸く書きかけのそれに手を付ける事が出来た。
オレが口を割らずとも、多分、ベルは見つけ出すだろう。
子どもの執着心は侮れない。
不憫ではあるが、彼奴もいい加減逃げても無駄だという事に気づいてもいい筈だ。
どちらの手助けもするつもりはねえが、事の展開に興味がないと言えば嘘になる。
「精々頑張れよぉ」
両者に向けて傍観者らしく陳腐な言葉を吐き出して、オレは再び報告書を手に取った。
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