スクアーロと私はマフィア学校時代の同級生である。友達だと私は一方的に思っているが、私たちの関係を表すならどちらかと言うと“腐れ縁”という言葉の方がしっくりくる。
学生時代の私も相変わらず泣き虫で、よく怪我をしては泣いていた。それを呆れたようにブツブツとお小言を言いながらもスクアーロは手当をしてくれた。懐かしいなあ。
泣き虫な私ではあるが、加えて危機感がないというか怖い者知らずというか、自分で言うのもなんだがその辺に関しては阿呆と言う他なく、隣の席になったという理由だけで“あの”スペルビ・スクアーロに「よろしくね!」と声を掛けたのが全ての始まりだった。
最初はウザがられた。物凄く。「かっ捌かれてぇのか!」とマジな目で言われた事もある。しかし私は挫けなかった。一歩間違えたら本当に殺されていたかもしれないのに。今思えばなんでそこまでしてスクアーロと友達になりたかったんだ。若さって怖い。
そのうち私を追い払うのが面倒臭くなったのか、あまりのしつこさに諦めたのかその真意は定かではないが、兎に角斬り殺されそうになる事はなくなった。話しかければ答えてもくれる。あれ、いい奴じゃん。と外見に反した律儀な性格に感動したのを覚えている。
人は見かけで判断してはいけないとこの時に学んだ。
ドジっ子ディーノも居たし、あの時は本当に楽しかったなあ。と、楽しい思い出を振り返っていた所で、ごつんと頭を殴られた。

「いつまでも泣いてんじゃねえ!状況を説明しろぉ!」

「う、だからって叩かなくても…!」

半泣きで頭を押さえて呻いた私をスクアーロは心底面倒臭そうに見る。いつまでも縋りついている訳にはいかないので取り敢えず体を起こしてスクアーロから離れた。
背中にビシビシと殺気が突き刺さって怖くて振り向けないので、私はスクアーロの両腕を掴んで最悪の事態に備える。

「う、後ろにいらっしゃる彼に連れて来られました…因みに私は仕事でディヴァートファミリー主催のパーティーに潜り込んでました」

「…お前まだその仕事してたのかぁ?」

よく生きてたな、と褒められているのか何なのか、言われた方としては非常に複雑な気持ちである。

「なあカス鮫」

「あ?」

「用が済んだら消えてくんね?オレ、ソレに用があんだけど」

「……ひぃ!」

さっきよりも数段低くなった声のトーンが彼の機嫌を表している。やばい、一人にされたら確実に殺される。

「スクアーロお願い行かないで!まだ死にたくないー!」

うわぁあ、と再び泣き出した私はぶるぶると震えながら一生懸命懇願する。
殺気が強くなった。もう嫌だ本当に怖い。一体、私が彼に何をしたというのだ。

「私、ただ仕事してただけなのに…っ!」

流石に不憫に思ったのか「落ち着けぇ」とスクアーロが乱暴に頭を撫でる。嗚呼、こうされるのも久しぶりだ。
少しだけ落ち着きを取り戻したのを見計らって、スクアーロは器用に体勢を変えて奴に視線を向ける。

「で、何でこんなの拾って来たんだあ、ベル」

「落ちてたから」

「……」

拾うという表現といい落ちてたという言い方といい、私は物か。無茶苦茶な物言いに気が遠くなった。どうせロクな理由じゃないとは思っていたが、ここまでとは…。

「拾ったんだから、もうオレのモンじゃね?」

「いや、断じて違う!!」

頭のネジがぶっ飛びまくっている彼の言い分は全く理解出来なかった。解りたくもない。
そしてこのキチガイをスクアーロに任せて、私は死ぬ気で此処から逃げ出した。やっぱり持つべきものは友達だ。これが私と奴とのファーストコンタクトだった。
言わずもがな、第一印象は最悪だった。
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