温い三日月


マツノファミリーは、日本を主な活動拠点としている中堅マフィアだ。
表向きは貿易商を謳ってはいるが、ファミリー独自のパイプを使って裏カジノの経営、武器の密売、ドラッグ、人身売買など、あらゆる分野にて顔を利かせているファミリーだ。
仕事を選ばないからこそ、持っている情報網も多く、中堅ながら侮れない。当然敵も多く、今東洋では抗争が後を絶たないらしい。
ボンゴレが目を付けたのは、彼らが持っているパイプだ。そしてあちらが目を付けたのは、ボンゴレという絶対的なマフィアとしての価値だ。
ボンゴレと同盟を結べば、マツノファミリーに手を出すことは事実上難しくなってくる。ボンゴレに喧嘩を売るのと同義だからだ。利害の一致。必要に応じてボンゴレへの協力を惜しまなければ、今以上にマツノファミリーは仕事がし易くなる。
ボンゴレとしてもマツノを配下に置くことで動向を監視する事も出来るのだからそれなりの価値はあるわけだ。きっと10代目である沢田綱吉は考えたのだろう。一般人に危害が及ぶ前に、消すか、否かを。そして、決断したのだろう。
同盟を結び、配下にしてしまえば監視・管理も出来る上、無駄な血を流さなくて済むかもしれないと。毒を以て毒を制す。彼らしいと言えば彼らしい。

「それで、同盟を結んで早々不穏な動きがあったからやっぱり消せってご命令でも来たんですか?」

「いや、マツノファミリーに目を付けてる弱小ファミリーの残党狩りだよ」

「おや、早速恩の安売りですか。それもこちらに依頼してくるなんて綱吉さん腹黒い」

「ま、牽制の意味もあるんだろうね。今のうちに実力見せておかないと、躾がなってないからね。噛みつかれても困る」

「それならベルが適任でしょうね。やる事が派手ですから」

プリンス・ザ・リッパーの通り名は伊達ではない。ヴァリアーでも1,2を争う残虐さを持った金髪の悪魔が脳裏を過る。遊びが過ぎるところがあるから、少し心配だ。

「ヘマして流血してマツノファミリー毎お掃除しちゃってたりして」

「ま、その時はその時さ。例えそうなっていても、沢田綱吉は何とも思わないだろうね」

「怖いですねえ、マフィアって」

にへら、と気の抜けた笑みを浮かべる名前の横顔をちらりと一瞥しただけで、マーモンは何も言わなかった。夜は、まだ明けない。見えてきた大きな屋敷。
風に運ばれて鼻を突くのは、嗅ぎ慣れた鉄の匂い。「どうやら派手にやっているようだね」見慣れた装飾の施されたナイフが木に刺さっている。
そして辺りに広がる何とも言えない焦げ臭さ。「ミンクちゃん絶好調ですねえ」木だか人だか分かりません。と肩を竦めた名前は、屋敷で唯一明りのついている部屋に目を向けた。

「メインディッシュには間に合いそうですね」

「そのようだね」

名前の肩に身を寄せるマーモンは欠伸を一つ漏らす。「終わったら、すぐに帰りましょうね」と小さな存在を気にかけて、名前は静かに足を進めた。
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