彼──ベルフェゴールに初めて会った日をキッカケに彼は度々私の前に現れるようになった。
彼は昼夜を問わず、自分が来たいと思った日に、時間に現れる。それは5階のマンションのベランダからだったり、鍵を閉めたはずの玄関からだったりと様々だ。
そして何をするでもなく、私にぴったりとくっ付いている日もあれば、リビングで寝ていたりと正直何が目的で此処に入り浸るようになったのかある程度仲良くなった今でもよく分からない。
ただ、彼に気に入られてしまったということだけは自覚している。でなければ不法侵入をしてまで私に会いに来るなんてことはしない筈だ。
「ベルでいーよ」と初めて会ったその日の夜、開口一番そう言われたのはまだ記憶に新しい。うしし!と無邪気に笑う姿を見れば何で家に居るのとか、本当は問い詰めるべき疑問の数々も消え失せてしまう私はやっぱりマズイのだろうか。
「アンタはのんびり過ぎるのよ」とか「もっと警戒心を持った方がいい」とよく友人や同期、はたまた上司にまで言われたことがあるが、その指摘は強ち間違いではないと最近漸く思うようになってきた。が、今更彼に対してそんな態度を取れるはずもないし、もう遅すぎる。受け入れるしかないと最近は半ば諦めている。

なんとなくだが、ベルは堅気の人間ではないだろうと薄々思っている。否、いた。「オレ、イタリアのマフィアの暗殺部隊の幹部の一人なんだよねー」と軽く言われたのはつい先日のことだ。
そう言われても冗談には思えなかったのはそう思わせる節がいくつかあったからだ。例えば、一般人ならピッキングなんて出来ないし、5階のマンションのベランダに易々と来れるわけがない。
血の匂いをさせてきた事もあった。それはワザとだったと今は思う。血の匂いに気付いて、私がどう出るか出方を見ていたのだと思う。その時私が彼に言った言葉は「お風呂貸しましょうか?」だった。思えばその次の日だった、彼にマフィアだと告げられたのは。
自分は基本的にどんな事が起きても冷静でいられるし、ある程度非現実的なことが起こっても受け入れられる柔軟さを持っていると自負している。それが唯一の長所かもしれない。不思議とベルが怖いとは思わないし、殺されるんじゃないかとか、そんな心配すらしたことがない。

なんでベルが私にこんなにも執着するのかは分からない。けれど、迷惑だと突き放さないのは、何だかんだ言って私も彼の事が嫌いではないからだ。好きかと聞かれれば返答に困るのだけれど。

Pensiero

09.09.07

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