「ん」

「えっ、いや、あの……!」

「ん」

「ん、じゃなくて…!ベル、一体何して…っ」

慌てたように言葉を詰まらせる名前の顔は真っ赤だった。両手がその行為を拒否するように左右に揺れ、そのまま何歩か後ろへと下がる。ぱき、と音を立ててベルフェゴールは詰まらなそうに口に含んでいた其れをかみ砕いた。

「今日何の日か知らねーの?」

「し、知ってますけど…私の記憶ではそんな事をする日では……」

「なあ、やろうぜ」

「…な、なにを」

「ポッキーゲーム」

ん、と新しいポッキーを口に含み、ベルフェゴールは名前を見据える。う、と言葉を詰まらせて、名前は懸命に首を横に振った。どうして自分がこんな恥ずかしい真似を、と名前は思う。今時そんな事、合コンだってしやしない。そもそも、今日はポッキーの日ではあるがポッキーゲームをする日ではない。一体誰だ、彼にこんな間違った知識を植え付けたのは。この状況から逃れようと後退する名前を、ベルフェゴールはじりじりと追いつめる。真顔でポッキーを銜えるその姿は酷く滑稽ではあるが、生憎それを突っ込める人間はこの場には居ない。
トン、と背が壁に当たって、彼女は逃げ場を失ったことに気づく。

「いいですかベル…!ポッキーの日は、某菓子会社が企業戦略の為に作ったもので──」

「いいから食えって」

「よくないですちゃんと聞いて…んむっ」

有無を言わさずベルフェゴールは名前の頭を押さえて無理矢理ポッキーを銜えさせる。そのままシャクシャクと咀嚼していくベルフェゴールに対し、名前は銜えさせられたまま如何することも出来ずに固まっている。ポッキーの長さはご存知の通りだ。彼が名前の唇に辿り着くまでそう時間は掛からなかった。ちゅ、と可愛らしい音を立ててすぐに唇は放れる。意外にあっさりと放れていった其れに、名前はほっと息を吐き出した。薄らと目尻に溜まった涙を拭い、名前は彼から離れようとした。が、ちょうどいいタイミングで腕を掴まれて距離を取ることは出来なかった。

「えーっと、」

「まだ残ってんだけど」

「………」

ほら、と見せられたその中には、何十本ものポッキーがぎっしりと入っていた。

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(助けて下さいスクアーロさん!)
(ゔお゙ぉい!てめ、何泣いて…!?)
(引っこんでろよ、鮫)

10.11.14

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