1/6 それはアスヴィットが発ってから四日過ぎた早朝のことだった。 外がにわかに騒がしくなり、イウは物々しいざわめきで起こされた。 地下牢に窓はないが、この冷え具合からして日はまだ昇っていないだろう。 「おい、起きろ」 血相をかかえたアスヴィットが入ってきた。 「お前、何者なんだ。元帥様がほんとに来て下さったぞ」 「本当に!」 イウは飛び起きると鉄格子を握り締めた。 「お前のおかげで元帥様と話すことができた。なんだかよくわからないが礼を言うよ」 興奮した様子でアスヴィットも鉄格子を握り締めて言った。 「ところでゴルトバってなんだ?」 アスヴィットは本部へと赴いたが、少年をスミジリアンの国境で解放せよ、とだけ末端兵に言われ手紙の受け取りも拒否されたらしい。 そこでアスヴィットはエメザレの部屋と思われる扉に向かって、イウに言われたとおり「ゴルトバ」と叫んだ。途端、慌てたように部屋からエメザレが出てきて、アスヴィットはすんなりと部屋に通されたのだそうだ。 「ゴルトバってなんなんだろう。ぼくも知らない」 「それは新造生物の名前です」 その時だった。よく通る美しい声がした。 [*前] | [次#] しおりを挟む モドルTOP |