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驚いて振り向くと、そこには少しの距離を置いて黒い髪の男が剣を携え立っていた。

「誰だ」

十八くらいだろうか。男は背が高く荒々しい印象だ。
男はイウを睨み付けて言った。
イウは誰かが居たことに安堵したが、今度は殺気に固まった。
しかもこの場所は一度死んだであろう場所だ。嫌でもあの時の痛みや情景を思い出してしまう。

「ぼくは、イウだ」

彼は震えながらもやっと言った。

「イウ?王子と同じ名前だな」

興味ゆえか敵意ゆえか知らないが、男は近づいてくる。逃げようにも背中には窓、扉は男の後ろ側にある。

「殺したりしない。親はどこにいる」

イウの怯えが伝わったらしい。男はいくぶん優しい声で言うと両手を挙げ、歩み寄る速度を落とした。

「いない。ぼく一人だ」

「俺はアスヴィットだ。臨時政府直属の整備部隊に所属している。剣は持っているが、つまるところ引越部隊さ。恐れなくていい」

アスヴィットはかがみ込んで目線をイウと同じ高さに合わせると歯を見せて笑った。

「臨時政府……?」

理解しがたい言葉にイウはアスヴィットをまじまじと見つめて呟いた。


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