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「答えは出たか」

玉座に座り、見下す位置にイウを置いてグセルガが言った。二人だけの空間に静かな声が響く。グセルガとの距離は昔よりずっと遠かった。

「……はい。父上」

「ではきくが、黒い髪についてどう思うのだね?」

その問いにイウは小さく答え始めた。

「黒い髪は、我々白い髪よりも……」

「何を言っているのか聞こえない。大きな声で言え」

その荒々しい声。昔から大嫌いだった。否定ばかりしてなにも認めようとしない考え。穏やかさから無縁の顔。濁った瞳。何もかも大嫌いだ。

「……黒い髪は、我々白い髪よりも明らかに劣った存在であり、その暴悪で陋劣な性質は、我々の秩序と安穏を乱し、我々にとって大変に有害な種族であることは確かです。
よって我々は我々の廉潔な血筋と高次な文化を固守するために神エルドより与えられた種族的特権を行使し、劣族への支配と更生を慈善的に行うのです」

「やっと、理解したのだな」

「はい。父上」

グセルガの目など見れなかった。
仕方のないことだ。それしか手段がなかったのだから。これはエメザレのためだ。けして自分のためではない。きっとわかってくれるだろう。どれだけ悩んで出した答えか。

「エメザレはどうだ」

エメザレの名が胸に響いて、心を痛くした。

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