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この国、クウェージアはエクアフという種族が暮らす小さな国だったが、到底暮らしやすい国とはいえなかった。
クウェージアでは白い髪のエクアフ、ユグリヴェ族が、黒い髪のエクアフ、ウェリアシア族を劣悪な方法で支配していた。
王族をはじめ、貴族はすべて白い髪のエクアフで、黒い髪のエクアフは市民の位すら貰えなかった。
クウェージア建国から約四百年、白い髪はその体制を維持し続けてきたが、限界はすぐそこまでやってきていた。
黒い髪の反乱が頻発し、彼らは白い髪の国外追放を要求したのだ。
もともと白い髪のエクアフは、北の国スミジリアンからきた移民だったのだから、もとの国へ帰れという黒い髪の主張は当然のものだった。

しかし、白い髪はスミジリアンに帰る気などさらさらなく、黒い髪を白い髪と平等に扱うか、それともさらに厳しく差別を行なって弾圧するかで、意見が二つに割れ、白い髪の中では内部分裂が起こっていた。

クウェージアの国王グセルガは熱烈に後者を支持していたが、少数の力を持つ貴族が反対したことで、王の意見はすんなり聞き入れられなかった。
崩れ行く足場が実は認識しているよりも、はるかに巨大であることにようやく気付いた魯鈍な王は、哀れにも王権を振りかざして喚き、検討中という理由で国内会議を勝手に中断した。

しかし、その対処は当然だが、なおさら国の安泰を害した。国全体に倦怠の念がたち込め、すべての都市は静寂と暗澹に支配されて、いずれ起こるだろう巨大な時代の荒波を恐れては皆、息を潜めて暮らしていた。
もはや希望からは見放され、完全なる失望に狂乱した黒い髪は残虐かつ冷淡に、今以上のものを希求した。


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