1/8


「まぁどうぞ」

連れて行かれたところは、地下牢でも拷問室でもなくジヴェーダの部屋だった。それなりに豪華な部屋だったが物があふれ、掃除もしていないのだろう。なんとなくほこり臭い。
特に暴力を振るようなそぶりもなく、ジヴェーダはイウをいすに座らせ、何を考えているのか茶に菓子まで添えて、それをイウの前に差し出した。

興味本位で見渡すと、あちらこちらに本が散らばっていた。拷問に関する本が多く時々シクアス語の本もあった。
案外努力家なのかもしれない。
奥にはアンティーク調のガラスケースに拷問器具が並べられており、なぜかそこだけはほかと違ってきれいにされていた。

ジヴェーダは向かいのいすに座り、自分にも茶を入れると音を立ててすすりながら口をひらいた。

「陛下はどうやら、今回ばかりは本気のようですよ。意地を張っている余裕などないのではありませんか。その若さで死にたくないでしょう?」

イウは答えなかった。
まさか自分を処刑すると言い出すなんて。
イウの表情は硬かったが、内心、彼は焦っていた。死を恐れているのではない。というのは正確でないかもしれないが、それよりもエメザレとの約束を果たす術を見つけ出したかった。

「べつだん、私にはあなたが処刑されようがされまいが、どうでもいいことなんですがね。でもエメザレのために死ぬのなら、彼がどのような人物であったか、ちゃんとあなたに教えて差し上げたほうがいいと思いまして。
彼はあなたが思い描いている人物像と、だいぶ違うようなので、もし真実をお伝えすることであなたの気が変わるなら、それも良いかと」

興味なさ気にそう言いながら、ジヴェーダは菓子を頬張った。


- 35 -


[*前] | [次#]
しおりを挟む

モドルTOP