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彼が一番優れているのだ。
彼が一番正しいのだ。

その思いが色あせることはなく、むしろもっと強烈な色で塗りつぶされていった。
しかし、あの次の日に宮廷からごみのように放り出されたエメザレの行方はわからない。この国はあの時と何も変わっていない。いや、さらに悪くなっている。
エメザレを無能者にしたことで、グセルガの黒い髪は白い髪よりも劣っているという説は、無理やり証明された。王に逆らった貴族は次々と処刑され、弾圧され消えていった。何かができたかもしれないのに、何もしなかった。無力だった。何も変えられていない。

小さな少年にはエメザレへの罪滅ぼしとして、グセルガに無意味な反抗するぐらいしかできることがなかった。そして、滑稽なほどに無力な自分に歯がゆさを感じ、かんしゃくを起こしては、強烈に刻み込まれたエメザレへの憧れを口走った。

イウはいつまでも信じていた。
いつか自分がこの国を変え、そしてエメザレと共に暮らすことができると。
エメザレはどこかで生きていて、それをずっと待ち望んでいるのだと。

明確な答えを見つけられずに迷走を続ける中で、エメザレという存在だけが、絶対的に正しいものとして、なかば妄想のように神格化されていった。
グセルガは何とかしてそれをとめようと、今まで以上に厳しく接したが、すればするほどイウの妄想は強くなるばかりだった。

イウの異常なまでの思いは、グセルガだけでなく宮廷で暮らす全ての召使と国中の白い髪から疎まれ、それは皮肉にもあのジヴェーダと肩を並べるほどにひどいものとして扱われた。
元々希薄だった父との関係は完全に崩壊し、理解しあえる仲間もおらず、ほとんど自分の部屋から出ることもなくなり、まるでクウェージアの王子は死んだかのように無視され、話題すら出ることはなくなった。

エメザレの解雇から四年という時が過ぎた。
自己の正義に心酔し、儚い希望にすがり付いたままの少年は十四になった。


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