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結局、イウがエメザレに会ったことはグセルガの耳に入らなかった。
おそらくジヴェーダはイウと話すことを禁止されていたのだろう。面倒事がいかにも嫌いそうなジヴェーダは自分の身を案じてか告げ口をしなかったらしい。

だがそのことはあまり関係なかった。どちらにせよ、今日こそ自分の意思をしっかりとグセルガに伝えるつもりでいたからだ。

「毎日毎日、殴らればかにされ、それでも懲りずに床を磨いている。なんて愚かなのだろう。あの濁り汚れた黒い瞳を見たか。我々を恐れ、憎んでいる。あの男には気をつけるのだ」
 
そう呟きながらグセルガは朝食の席にやって来た。傍らの召使はその呟きを聞いているのかいないのか、黙って王の座る椅子をひいた。
グセルガは黒い髪を目に映すことすら嫌悪していて、エメザレという存在を可能な限り無視し、できるだけ顔を合わせないように心掛けていたが、今日に限っては何の手違いかエメザレに出会ってしまったのだろう。
いつにも増してグセルガの顔は不機嫌だった。

「ち、父上……!」

いつもはおとなしい息子が、いきなり大声を出したのでグセルガは驚いた表情をした。

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