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「まず初めに、私は伝えます。情報源についてのことは話ができません。モート種族の情報システムはとても長い時間をかけて作られたものです。我々はそれを使って世界中のことを知ることができます。それが機密事項のひとつです。なぜ我々がそのことを知っているのか、という質問は答えません」

「わかった」

 と答えたが、なにか引っかかる。高峰が限りなく真実を知っているようにも聞こえる。相手は世界を征服できる武器を所持しているとされるモート種族だ。多少の誇張を差し引いても、他種族には真似できない高度な情報収集能力を持っていることに納得はできる。
 
 だが、それがどれほどのものなのか。まずはそれを探ってみたほうがいい。
 
 イウは高峰をにらめ付けるようにしながら立ち上がると、高峰のほうへ歩いていった。そこで気が付いたが、高峰が先ほどこちらへ近付いてこなかったのは、遠慮していたからではない。セウ=ハルフたちが話を聞きにくいように、距離を保っていたのだ。

 イウが高峰の向かいに立ち止まると、やはり聞かれることを意識しているらしく、高峰は声をひそめて話し始めた。

「我々はエメザレにとても興味を抱いています。オルギアの消失事件と、エメザレの空間転移の現象は似ているからです。知っていることを教えてください。エメザレについて、どんなことでも構いません」

「ぼくがエメザレを見たことがあるのは一度だけだ。今から四年前、エメザレはクウェージアの宮廷で働くことを許された。その時、父上の用事でぼくも宮廷に――」

「ひとつ、言います」

 だがイウの発言はすぐに遮られた。確かに彼の発言は嘘ではあったが、当時の立ち位置としては、あながち嘘というわけでもない。実際、四年前にイウがエメザレと話をしたのは二度だけだった。しかし高峰はまるで全てを知っているかのように、イウの話を静止したのだ。

 冷静でいようとすればするほど心臓の鼓動は早くなり、指の先が震えてくる。イウはなんとか落ち着こうと、静かに息を吐いて耳を傾けた。


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