1/6


 彼がカルテニに到着して三日目のことだった。隣町のカオクールで例の襲撃事件が起こった。セウ=ハルフとデミングは隣町へ詳細を聞きにいったらしく、夜遅くまで帰らない、とデミルマートが朝食を運んできた時に教えてくれた。

「どうにも物騒ですね。早く解決するといいんですが……。これではモートの研究団の方たちも来るのが大変でしょうね」

 イウの部屋の小さなテーブルに、朝食を並べながらデミルマートは呟いた。
 元々他種族を嫌う白い髪の村でダルテスの襲撃事件が起きたのだ。おそらく関係ないと思われるモートの研究団を近隣の白い髪は警戒するだろう。変な輩が自衛と称して研究団を襲うようなことがなければいいが、あれば国際問題に発展しかねない。もっともそこまでの問題になってしまえば、むしろこのように小さな村には、関係のない出来事になってしまうだろうが。

「二日後にちゃんと来るのかな」
「来ると思いますよ。あの方たちが時間に遅れたことはありませんもの。見た目はまぁ、ちょっと不気味で無愛想ですけど、基本的には律儀な方たちだと思います」

 温和そうなデミルマートですらこの程度なのだ。そう世の中は温和な人物ばかりで構成されているわけではない。彼は会ったこともないモートの研究団を想像して心配になった。

「ただいま。デミルマートさん」

 一階の玄関の方からセウ=ハルフの声がした。ただいまと言うからには、もう帰ってきたのだろうが、まだ昼と呼ぶにも早い時間帯である。

「ちょっと行ってきます。お坊ちゃんは朝食を召し上がってください」

 デミルマートはそう言って、小走りで部屋を出て行ったが、彼も事件のことが気になっていたのですぐに後を追いかけた。


- 113 -


[*前] | [次#]
しおりを挟む

モドルTOP