1/7


しばらく馬を走らせたところで、カルテニに着いた。そこは今日寝ていた場所から驚くほど近く、死ぬかもしれないと恐怖していた昨晩の自分が恥かしくなるくらいだった。

セウ=ハルフが言っていた通りカルテニは田舎の村であり、道も石で舗装されているところはほとんどない。広大な畑の中に一軒一軒小さな家が建っているだけの寂しい風景で、それでも何人かの村人が朝から畑を耕してはいたが、活気とは無縁の村に思えた。一帯が平原であるせいで景色は単調で絵にもならないような地味な印象だ。

「カルテニに着いたが、お前どうするよ? 泊まるとこ探してんならうちに来るか? こんな朝早くちゃ宿屋も開いてねえよ」

セウ=ハルフは馬を走らせたまま聞いてきた。

「いいの?」

漠然と宿屋に行くつもりだったが、言われてみればこんな早朝に開いているはずがない。

「構わんよ。どのみちお前の世話を焼くのは俺じゃないし」

と言ってセウ=ハルフは悪そうな顔をしてみせた。

さらに馬を走らせ村の中心らしき場所に辿り着いたが、中心といってもかろうじで道が石で舗装され、潰れかかった商店が何件が並んでいるだけの寂れようで、さらに人の少ない時間帯ゆえに少し間違えれば廃村だと思ってしまうくらいの静かさだ。
その中にあって、古いがかなりの存在感と威厳の漂う屋敷の前でセウ=ハルフは止まった。

「ここがセウ=ハルフの家? すごい屋敷だね」

セウ=ハルフの着ているものから、すっかり農民だと思い込んでいたのでイウは驚いて聞いた。

「ああ、ここは借りてるだけ。昔、ここの領主様が狩りをする時に使ってた別荘さ。今は世代が変わって全く使われなくなったんで俺たちが使ってるの」

「セウ=ハルフって何者なの?」

イウが真面目な顔をして聞くと、セウ=ハルフはそれが面白かったらしく声を上げて笑った。

「俺たちは……そうだな、まぁ農民の親戚かな。よく農作業手伝うし」

答えを濁しながらも、彼は敷地の中に入っていった。


- 98 -


[*前] | [次#]
しおりを挟む

モドルTOP