7/9


「イース。どうか彼を助けて。ぼくを助けたのなら、お願いだからエメザレを助けて」

その時イウは半ば妄言のようにして願った。


 イースだと。


それは声のようだった。大きな広がりで頭に響いている。

 「エメザレ?」

エメザレの声に似ていた。驚いて、エメザレの顔をのぞき込んだが、彼の口が動いたようには見えない。


 わたしは不完全な部分を補う不完全な存在。エメザレではない。
 君はイースに会ったのか。


「エメザレはイースのところへ行ったの?生き返る?」

イウはエメザレを抱いたまま空中に聞いた。声のようなものは姿が見えない。


 生き返る?不可能な話だ。
 エメザレの住基盤は既に我々の手に渡った。
 これは契約によるものだ。


 
声のようなものは聞き取りやすいように配慮したのか、広く鈍い音域から狭く絞った音に変わった。

- 84 -


[*前] | [次#]
しおりを挟む

モドルTOP