5/9 ただ―― 大好きだったのに お前のようになりたかったのに ぼくは大きくなったのに お前の力になれると思ったのに エメザレ。ぼくは許さない。 叫び声と激しい憎しみが、すさまじい勢いで全ての思いを猛爆する。 イウはその絶望に任せてエメザレの胸に強く剣を突き刺した。 確かな手応え。刺したという感触。 しかし、彼は避けられたはずなのだ。ろくに剣も握ったことのない小さな少年の一突きなど。簡単にかわせたはずなのだ。 それなのに、エメザレは動かなかった。黙ってそれを受け入れた。それが義務であるかのように。 恐れのない真っ直ぐな姿勢で。しっかりと。 血が流れ出るエメザレの胸の中で、はっとしてイウはエメザレの顔を見上げた。 その顔に憎しみや苦しみは浮かんでいなかった。 ただ、微笑んでいた。 そして胸の中でイウを優しく抱きしめた。それだけで、彼は何も言わなかった。それからだんだんと、エメザレの体から力が抜けていき、体が傾くと一瞬にして、エメザレは固い地面へと落ちていった。 [*前] | [次#] しおりを挟む モドルTOP |