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「いや…いやだ。ぼくを置いて行かないで! もう独りは嫌だ! 一緒にいて、一緒にいてよ! お願いだからぼくを独りにしないでよ………」

確かなのはこの思いが報われないということだけ。目の前が濡れて、何がしたいのか、どうすればいいのか、もう前がよく見えない。
無様にもエメザレの胸に擦付いて、よだれを垂らして泣いて、そしてエメザレの腰についていた短剣を引き抜いた。

「王子……何をするんです!」

エメザレはそれに気付き身を引いた。エメザレが遠のいていくのが、とてつもなく気に食わなかった。

「もう王子じゃない! ぼくの国はもうない!」

「剣をしまってください!」

エメザレは叫びに近い声を上げた。

「うるさい、黙れ! 何もないんだぼくには。何もない。何も。どうしてぼくから遠ざかるんだ? お前まで、ぼくを嫌がるのか? お前のせいだ。お前がぼくを駄目にした!」

「私達の時代です。あなたはいらない」

一体お前は誰なんだ。
その瞳。虚無を携えた瞳は澄んでいない。ただ真っ黒な果てしない闇。
そしてあの日の鮮やかな映像が、イウの頭の中で何度も何度も繰り返し流れては、無慈悲にもその闇の中に次々と吸い込まれていく。
美しすぎたエメザレと、あまりにも光り輝きすぎていた想いが、今まさに天地を反して暗澹の底へと落ちていく。

だから、絶望と憎しみのあまりに。


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