3/9 「どうして、あなたはそんなに優しいのですか」 エメザレの声には静かな苦しみが混じっていた。 「なぜ、私をそこまで思ってくださるのですか。 知っているのでしょう。私の汚らわしい行いを。ジヴェーダとのことも。軽蔑されるべきなのに……。 あなたは私を、まるで穢れのない聖人のような目で見る。 こうして生まれ変わったかのようでも、沁み付いた悪習は変えることができなかった。私はあなたが思っているような英雄ではないのに」 あの真っ直ぐな瞳がついに下を向いた。 「いいんだ。エメザレ。ぼくはお前が、どんなことをしていたって気にならない。何をしていたって、汚らわしいと思わない。同性愛者でも殺人鬼でも化け物でもなんでもいい。 お前はエメザレなんだろう? ぼくを殺したことくらい、なんとも思っ ていないよ。そんなことくらい許すから! だからぼくと一緒にいてくれ……どこにも行かないで、離れたりしないで!」 闇雲で盲目の思いは滑稽なほどに純粋にエメザレを愛しているらしい。 先ほどの巨大な感情のうねりはすっかり掻き消され、今はそれよりもこの目の前にいる偉大な英雄に何としてもすがり付いて、わずかな愛のお零れを頂こうと必死に醜態を晒している。 それを恥じることも忘れて、イウはただ思いを叫び吐いた。 「本当です。新政府が確立し落ち着いたら必ず迎えに行きます」 エメザレの言葉を信じてこうなった。その言葉をもし信じることができたらどれほど嬉しいことだろう。 [*前] | [次#] しおりを挟む モドルTOP |