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儚い夢から目覚めると、そこはエメザレの腕の中だった。
マントを被せられているらしく視界は狭いが、エメザレの手綱を引く腕と鼻息荒く森を疾走している馬が見えた。
日は既に西へだいぶ傾いている。

「エメザレ、馬をとめろ!」

しかしエメザレはそれに従う気配はない。

「とめろと言ってるんだ! ぼくをおろせ」

イウはエメザレから手綱を奪い、引くと馬はいなないて止まった。
辺りには木々しかない。ここが一度も来たことがない森の奥深くであることは明らかだ。

「ここは北の国境の近くです。馬で行けばスミジリアンにすぐに着きます。あなたにこの馬を差し上げますから。これは少ないですがお金です」

エメザレは馬から降りると、そう言って小さな袋を差し出した。

「ぼくは行かない!」

馬から飛び降り、憎しみを込めてその袋を思い切り払った。
詰め込まれた、たくさんの金貨は地面に散らばり夕日を反射して皮肉のように輝いている。

「きっと会いに行きます。約束しますから」

それでもエメザレは声を荒げたりしないで落ち着いていた。

「嘘だ」

会いになんてこない。もう二度と会えない。
なぜかそんな気がしてならない。それがとても恐ろしい。

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