4/6 「嘘だ。全部、全部嘘だ」 無意識に涙が溢れた。激情はあまりにも巨大すぎてもはや静かな祈りでしかない。 「私はあなたを裏切った。それだけのことです」 「どうして? どうして? もう少しで、ぼくは王になれたのに。そうしたら、誰も死ななかった。そうしたら、お前の力になろうと思って……ずっと約束を覚えてた」 嘘だと言ってほしくて、希望を消したくなくて、必死にエメザレにしがみついた。 けれどもエメザレはそんなイウを抱きしめてはくれない。絶望的な答えはすぐそこまでやってきている。けれども諦めたくない。エメザレを放したくない。 「私もですよ。王子」 エメザレの声は優しかった。 「なら、なぜ…?」 「待ってほしいと頼みました。でも、誰も私の言うことなんかに耳を貸さなかった。 戦争が起こりかけていた。私は世界を知らなかった。あそこを出て、初めてこの国が置かれている状況に気付いたのです。でも気付いたときにはもう、私の力ではどうにもならなかった。 多くの血が流れる、たくさんの者が傷付き、悲しみ、絶望する。どうしても、とめたかった。 私は自分にできる全てのことを考えました。でも、どんなに考えても私にできる最良の手段は、王の血筋を断つことだったのです」 エメザレは言った。悲しそうに。苦しそうに。申し訳なさそうに。 でも、だからなんだというんだ。 [*前] | [次#] しおりを挟む モドルTOP |