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「嘘だ。全部、全部嘘だ」

無意識に涙が溢れた。激情はあまりにも巨大すぎてもはや静かな祈りでしかない。

「私はあなたを裏切った。それだけのことです」

「どうして? どうして? もう少しで、ぼくは王になれたのに。そうしたら、誰も死ななかった。そうしたら、お前の力になろうと思って……ずっと約束を覚えてた」

嘘だと言ってほしくて、希望を消したくなくて、必死にエメザレにしがみついた。
けれどもエメザレはそんなイウを抱きしめてはくれない。絶望的な答えはすぐそこまでやってきている。けれども諦めたくない。エメザレを放したくない。

「私もですよ。王子」

エメザレの声は優しかった。

「なら、なぜ…?」

「待ってほしいと頼みました。でも、誰も私の言うことなんかに耳を貸さなかった。
戦争が起こりかけていた。私は世界を知らなかった。あそこを出て、初めてこの国が置かれている状況に気付いたのです。でも気付いたときにはもう、私の力ではどうにもならなかった。
多くの血が流れる、たくさんの者が傷付き、悲しみ、絶望する。どうしても、とめたかった。
私は自分にできる全てのことを考えました。でも、どんなに考えても私にできる最良の手段は、王の血筋を断つことだったのです」

エメザレは言った。悲しそうに。苦しそうに。申し訳なさそうに。

でも、だからなんだというんだ。


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